柴田聡子を紐解く5通の手紙。音楽も詩も、子どもが戯れるように

柴田聡子を紐解く5通の手紙。音楽も詩も、子どもが戯れるように

インタビュー・テキスト
村尾泰郎
撮影:南 阿沙美 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「とにかく言葉という芋を掘り続ける」

―柴田さんの言葉の使い方って独特ですよね。どんな言葉を使うか、というところで意識していることはありますか? たとえば、よくある言い回しは使わないとか。

柴田:新しい使い方を思いつきたいっていう気持ちは常にあります。でも最近は、使い古された言い回しだとしても、それが自分の言葉だと思えるんだったら問題ないと思っています。大事なのは自分の言葉で書くってことだって。

柴田聡子

―シンガーソングライターにとって、自分の言葉に説得力を持たせられるかどうかは大きな問題ですよね。

柴田:そうですね。日常生活でも自分の言葉に説得力を持たせるのは大切だし、すごく難しい。だから、どんなにありきたりだろうが「自分が本気でそう思っている言葉で喋る」という努力は人間としてしたいと思います。

―柴田さんの場合は、歌詞だけではなくエッセイや詩も書かれていますが、歌詞を書くときとは違う感覚ですか?

柴田:自分にとっては音楽も文章も、何か大きなものに見守られながら子どもが遊ばせてもらっているようなもんです。だから、思いどおりにいかなくて当然というか。今、音楽っぽいもの、詩っぽいものを作っているけれど、それを真顔で語るときはまだ来ないって感じです。

―芸術の神様に見守られながら遊んでいる?

柴田:神様っていうと霊的すぎるから、すごく大きい存在という感じ。だから楽しくやれているのかもしれないですね。私には霊感みたいな閃きはなくて、神様とは無縁というか。歌詞を書くときも、思いついたひとつの言葉からイメージを繋げていく、っていう芋づる式に考えていくことも多い。そこには神秘的なことは全然なくて、ただ黙々と芋を掘ってる感じ。お百姓さんぽい。

―大きい芋が出てくることもあれば、つるがプツンと切れたりもする。

柴田:切れることなんてザラですね。でもとにかく芋を掘り続ける気持ちで。

柴田聡子

柴田聡子

2通目はドラムのイトケン。独自の歌と言葉の関係をさらに深掘り

―では、次はイトケンさんの手紙です。

柴田:はあ~。心臓がドキドキする。読みます!

どーも、イトケンです。
最初に柴田さんに会ったのは蓮沼執太チームでのYCAM公演の時だったかな。
2012/3/11だったようです。
この時は前乗りしてサウンドチェックを前日にやる事になっていて、となると蓮沼チームは飲みに徹します。柴田さんも一緒に行った居酒屋で「獺祭もうないです」って言われるまで飲んだという記憶しかない…
そんなに飲んだ次の日、近隣の部屋からアコギと歌声が。柴田さんの練習の音だったようで、「凄い!えらい!」と思ったっすよ。
それからしばらくはライブ会場で会ったりとか、吉祥寺でばったり、とかだったかな。
その後、灰野敬二さんの「奇跡」公演に検出装置チームで入った時に、演奏者でいたよね!(2015/10/2)
この時には既に俺のレコ発(2015/11/16)の対バンでオファーしてたはず。
で、一緒に演奏したのは現inFIREのメンバーしのぶちゃんのバースデーライブ(2017/9/8)だったよね。
この時に柴田さんの曲を「ん、かわってるな」と思ったんかなー。

その次の年にinFIREとして招集されたんすよね。
その時に歌詞も資料としてもらったんですが、歌としてきいてる歌詞とテキストでもらった歌詞の存在感の違い。
普通に読み物的な存在感。
曲は曲で俺が昔聴いた歌謡曲マナーを継承したような楽曲。

面白い。

その年の後半から新しいアルバム「がんばれ!メロディー」の制作に入るんすよね。
そのプリプロ段階でも、「うわ、この言葉かー」とか「この譜割りでこの言葉かー」などなどやっつけられる事多数。
普通に歌詞として「あー恋愛かなー」と思ってたのが意味を聴いてみると全く違ったりとか、なんというか裏切られ続ける!

ツアー中のソロコーナーでも、普通にリスナーになって「あーいい曲だなー」と思う。

今後もinFIREとしていろいろ楽しんで、裏切られていきたいと思いますですよ!

柴田:ありがとうございます! もう、温泉に入ってる感じです(笑)。

―飲んだ次の日の朝にギターの練習をしている、という努力家の横顔が描かれていますね。

柴田:いやあ、練習なんてしないですよ。イチローに比べたら全然。

柴田聡子

―比べる相手が大物すぎます(笑)。

柴田:練習というか、毎日ギターを弾くようにしているくらいです。最近その必要性に気づかされて。

―というと?

柴田:世の中には一発でいい音を出せる人もいるんですけど、私はそういうタイプじゃなくて。ギターに触っていないと、どんどん弾けなくなっていくんです。イトケンさんの手紙に書かれている頃って、曲作りをはじめて間もない頃で、ライブも全然してなかったんです。だから練習しないとダメだった。ギターを弾くのは楽しいですけどね。

―ギターを弾きはじめたのはいつ頃ですか?

柴田:高3の終わり頃です。ゆずが弾きたかったんです。それから大学3年頃まで、ちょこちょこ弾いてました。

―柴田さんはギターの弾き語りでデビューされましたが、柴田さんにとってギターは特別な楽器ですか。

柴田:そうですね。実家にはピアノもあったんですけど、ギターに惹かれたんですよ。音がキレイだし、形もカッコいい。無限の可能性がある楽器だなって。

「私、自分が書いた歌詞って、自分と切り離されているように感じるんです」

―弾き語りという表現方法の魅力は、どんなところでしょう。

柴田:そうですね……私、自分が書いた歌詞って、自分と切り離されているように感じるんです。でも、歌っているときは、歌詞で書かれていることが自分にとって本当のことのように思える、という謎の現象があって。

―シンガーソングライターって、自分の心情を歌詞にする人が多いじゃないですか。柴田さんの場合は、歌詞と自分が切り離されている。

柴田:そういう無責任なところがあるんです。でも、歌っているとその言葉が生まれてきた意味みたいなものを実感できる。「偉いなあ、よく生まれてきたなあ」って思う。その歌詞を自分が書いたっていう実感はないけど、私が歌って、それを聴く人がいるときに、その言葉の存在を実感できるんですよね。

柴田聡子

―言葉を届ける相手が見える、というのは重要なことかもしれないですね。イトケンさんの手紙には「歌謡曲マナーを継承したような楽曲」と書かれていましたが、ポップさは最近の柴田さんの曲の魅力のひとつですね。

柴田:「この曲はキャッチーにできた!」と思うときもあるんですけど、同時に「キャッチーって何だろう?」って、ずっと考えているんですよね。やっぱり自分にはまだまだわからない感覚だから。

―そういう感覚があるからこそ、柴田さんが思い切りキャッチーな曲を作っても、そこにオリジナリティーがしっかり残っているんでしょうね。そのバランス感が面白い。キャッチーさを研究して何かわかったことはありました?

柴田:表面的なもの、ルールみたいなものは少しわかってきたんですけど、そこからもっと面白くするのは、作り手次第なんだろうなって思います。

―作り手のセンスやオリジナリティーが関係しているんでしょうね。

柴田:自分のオリジナリティーって自分ではなかなか把握できなくて、「わかった!」と思ったことは違う気がするんです。だから、自分で「これが自分のオリジナリティーかも」と思っていることはあんまり信用できない。……どうやったら、人としてグローイングアップできるんでしょうね。人間の成長は企業の成長みたいにはいかないんですかね。いくらビジネス書を読んでもわからないんでしょうか(笑)。

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リリース情報

柴田聡子『SATOKO SHIBATA TOUR 2019 “GANBARE! MELODY” FINAL at LIQUIDROOM』
柴田聡子
『SATOKO SHIBATA TOUR 2019 “GANBARE! MELODY” FINAL at LIQUIDROOM』(CD)

2019年10月23日(水)発売
価格:2,500円(税込)
PCD-18869

1. 結婚しました
2. アニマルフィーリング
3. 佐野岬
4. すこやかさ
5. 遊んで暮らして
6. 忘れたい
7. ばら
8. いきすぎた友達
9. 海へ行こうか
10. いい人
11. 東京メロンウィーク
12. 心の中の猫
13. セパタクローの奥義
14. 後悔
15. ラッキーカラー
16. ワンコロメーター
17. 涙
18. 捧げます
19. ラミ子とシバッチャンの仲良しソング ~Let's shake hands with me~
20. ジョイフル・コメリ・ホーマック

イベント情報

『柴田聡子inFIRE ホール公演「晩秋」』

2019年11月9日(土)
会場:東京都 神田明神ホール

2019年11月21日(木)
会場:京都府 ロームシアター京都 ノースホール

料金:各公演 前売4,200円

プロフィール

柴田聡子(しばた さとこ)

1986年札幌市生まれ。大学時代の恩師の一言をきっかけに、2010年より都内を中心に活動を始める。最新作『がんばれ!メロディー』まで、5枚のアルバムをリリースしている。2016年に上梓した初の詩集『さばーく』が第5回エルスール財団新人賞<現代詩部門>を受賞。現在、雑誌『文學界』でコラムを連載しており、文芸誌への寄稿も多数。歌詞だけにとどまらず、独特な言葉の力にも注目を集めている。2019年10月、初のバンドツアーの千秋楽公演を収録したライブアルバム『SATOKO SHIBATA TOUR 2019 “GANBARE! MELODY” FINAL at LIQUIDROOM』をリリースした。

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