崎山蒼志と君島大空、2人の謎を相互に解体。しかし謎は謎のまま

崎山蒼志と君島大空、2人の謎を相互に解体。しかし謎は謎のまま

崎山蒼志『並む踊り』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:松永つぐみ 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

“潜水”に関しては、自分がすごく感情的になっている歌だなって思います。(崎山)

―そもそも、“潜水”はいつ頃作られた曲だったんですか?

崎山:2年前の夏頃ですね。“国”と近い時期に作っていました。最初に君島さんが褒めてくださったのが、この“潜水”だったんです。

君島:この曲も初めて聴いたとき、すごく見たことのある景色のような感覚があったんです。心象にすごく近いところにある景色、というか。自分がその景色のなかにいたときに言いたかった言葉を言ってくれているような曲だと思いました。あと、この曲では<愛してる>と歌われますよね。

僕は「愛してる」とか絶対に言えない性格だと自分では思っているんですけど、歌のなかなら、こんなに素直に言えるんだなって、改めて気づかせていただいた感じがします。

左から:崎山蒼志、君島大空

―崎山さんは、“潜水”を作った頃のことは具体的に覚えていますか?

崎山:覚えています。個人的に、いろいろ思うことがあったんですけど……。普段、曲を書くときは俯瞰している感じが多いなって自分で思っているんですけど、“潜水”に関しては、自分がすごく感情的になっている歌だなって思います。

―じゃあ、他の曲とは少し違う質感のある曲なんですね。

崎山:うん、違う感じはありますね。

君島:たしかに、視点がずっと「ひとり」な感じがしますよね。あんまり動いていない感じがする。心の動きはあるんだけど、存在自体は、ずっと渚に立っている感覚というか……そこで、移ろっていく景色がある。

僕がこの曲を聴いてそう思うのは、本当に、自分の過去にそういう時間があったのか、そういう記憶が自分のなかで作られたのか、その両方なのかはわからないですけど……。「1対1」になってくれる曲だなって思いますね。完全に、ひとりにしてくれる感じがする。それが、僕にとってはすごく心地いいです。

崎山:僕としても、本当に、「ひとりの曲」っていう感じがします。

左から:崎山蒼志、君島大空

―なぜ、2年前のそのとき、こういう曲が作れたんだと思います?

崎山:思い当たることはあるんですけど、言いづらいです。ちゃんと言葉にできない気がします。

君島:(“潜水”の歌詞を見ながら)この言葉たちになるしかなかった感情っていうことだよね。だからこそ、この曲を聴いている間は、そこに「伏せられているもの」を、すごく感じられるんだと思う。

僕がやりたかったのは、めちゃくちゃ歪んだギターにかき消される、崎山蒼志の歌が聴きたかったっていうことです(笑)。(君島)

―今回の“潜水”は、サウンドプロデュース、編曲、コーラス、それにギターをはじめとする楽器を君島さんが担当されたんですよね。そして、ドラムは君島さんの作品にも参加されている石若駿さんが叩いている(参考記事:石若駿という世界基準の才能。常田大希らの手紙から魅力に迫る)。こういったバンドサウンドともいえるプロダクションで曲を完成させるのは、崎山さんのディスコグラフィーのなかでも初めてのことですよね。

崎山:そうですね。最初に、君島さんからデモのようなものをいただいて、その時点で「うわっ、ヤバいな!」と思って、レコーディングに臨んだんです。現場で、石若さんがドラムを叩いている光景も見たんですけど、本当に「ぱない」というか……「この人、どうしたんだろう?」って思って……。

君島:ほんと、「この人、どうしたんだろう?」って思うよね(笑)。

崎山:「なんかあったのかな」って……(笑)。

―(笑)。君島さんは、プロデュースするにあたって、どんなことを意識されましたか?

君島:あんまり編曲をする余地がない曲なので、アレンジと言えるようなことはそんなにしていなくて。僕がやりたかったのは、めちゃくちゃ歪んだギターにかき消される、崎山蒼志の歌が聴きたかったっていうことです(笑)。

―おぉ(笑)。

君島:歌の邪魔をすることを考えました。

左から:崎山蒼志、君島大空

―たしかに、1曲のなかで、崎山さんと君島さんの「個」と「個」がぶつかり合って摩擦を起こしているような曲に仕上がっていますよね。

君島:相手が、崎山くんだからできたんです。それくらい、崎山くんの歌は強いから。他の人では、こうはできないと思います。あと、いつも自分の音源ではミックスまでやっているんですけど、この“潜水”はミックスはやっていないので、次に機会があればミックスまでやりたいですね。めちゃくちゃ微細なところまで手を伸ばして、2年ぐらいかけて1曲作りたい(笑)。

崎山:あぁっ! いいですね!

君島:それこそ、18分くらいあるような曲を作りたいね(笑)。

―こうしたサウンドメイクを経験してみて、崎山さんのなかで、この先の音楽的な可能性も広がったりしましたか?

崎山:わからないですけど……今回の“潜水”のような曲は、絶対に自分ではできないことだと思うんです。君島さんとやったから、できたことで。なので、「この先、こうしてみよう」みたいなことは今は思わないですね。……でも、本当に感動しました。自分が作った曲が、こういう形になるんだって。

君島:僕のこの曲に対する気持ちが強すぎて、今回はこういう形になりました。気持ちをぶつけるしかなかった。

崎山:本当に、ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします。

 

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リリース情報

『並む踊り』(CD+DVD)

2019年10月30日(水)発売
価格:2,728円(税抜)

[CD]
1. 踊り
2. 潜水(with 君島大空)
3. むげん・(with 諭吉佳作/men)
4. 柔らかな心地
5. 感丘(with 長谷川白紙)
6. 夢模様、体になって
7. 烈走
8. 泡みたく輝いて
9. Video of Travel
[DVD]
1. ドキュメント「崎山蒼志 LIVE 2019 とおとうみの国」
2. 「国」ミュージックビデオ

イベント情報

『崎山蒼志 TOUR 2019 「並む踊りたち」』

2019年10月28日(月)
会場:東京都 渋谷 CLUB QUATTRO

2019年11月3日(日・祝)
会場:香川県 高松 SPEAK LOW

2019年11月4日(月・振休)
会場:大阪府 梅田 TRAD

ゲスト:諭吉佳作/men

2019年11月10日(日)
会場:東京都 神田明神ホール

ゲスト:長谷川白紙

2019年11月16日(土)
会場:福岡県 ROOMS

2019年11月17日(日)
会場:広島県 SECOND CRUTCH

2019年11月30日(土)
会場:愛知県 名古屋 JAMMIN'

2019年12月15日(日)
会場:静岡県 浜松 窓枠

ゲスト:君島大空

2019年12月21日(土)
会場:宮城県 仙台 HooK

2019年12月22日(日)
会場:北海道 札幌 KRAPS HALL

料金:各公演 前売3,700円(ドリンク別)

プロフィール

崎山蒼志(さきやま そうし)

2002年生まれ静岡県浜松市在住。母親が聞いていたバンドの影響もあり、4歳でギターを弾き、小6で作曲を始める。2018年5月9日にAbemaTV『日村がゆく』の高校生フォークソングGPに出演。独自の世界観が広がる歌詞と楽曲、また当時15歳とは思えないギタープレイでまたたく間にSNSで話題になる。2018年7月18日に「夏至」と「五月雨」を急きょ配信リリース。その2か月後に新曲「神経」の追加配信、また前述3曲を収録したCDシングルをライヴ会場、オンラインストアにて販売。12月5日には1stアルバム『いつかみた国』をリリース、併せて地元浜松からスタートする全国5公演の単独ツアーも発表し、即日全公演完売となった。2019年3月15日にはフジテレビ連続ドラマ『平成物語』の主題歌「泡みたく輝いて」と明治「R-1」CM楽曲「烈走」を配信リリース。5月6日に自身初となるホール公演「とおとうみの国」を浜松市浜北文化センター大ホールで大成功させた。10月30日に2ndアルバム『並む踊り』をリリースした。

君島大空(きみしま おおぞら)

1995年生まれ日本の音楽家。高井息吹と眠る星座のギタリスト。2014年からギタリストとして活動を始める。同年からSoundCloudに自身で作詞/作曲/編曲/演奏/歌唱をし多重録音で制作した音源の公開を始める。ギタリストとしてタグチハナ、konore、坂口喜咲、婦人倶楽部、Orangeade、などのアーティストのライブや録音に参加する一方、2017年には霞翔太監督作品「離れても離れてもまだ眠ることを知らない」の劇中音楽を担当。アイドルグループsora tob sakanaへの楽曲提供など様々な分野で活動中。2019年3月、1st EP『午後の反射光』をリリース。2019年7月、『FUJI ROCK FESTIVAL’19「ROOKIE A GO-GO」』へ出演を果たした。

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