ヒゲダンはなぜブレイク? 紅白も決定、新時代の国民的バンドへ

『紅白歌合戦』初出場も決定。ストリーミングチャートの記録を塗り替え続ける「新時代の国民的バンド」

Official髭男dismが、2019年のヒットチャートを席巻している。

特にストリーミングサービスにおいては圧倒的な支持を集めている。「Billboard JAPANストリーミング・ソングス・チャート」(11月18日付)では“Pretender”“イエスタデイ”“宿命”がトップ3を独占。“Pretender”は25週連続で1位となり連続1位の記録を更新している。「オリコン週間ストリーミングランキング」(11月18日付)でも24週連続で1位の座を守り、累積再生回数においてもあいみょん“マリーゴールド”を上回る歴代1位となった。

Spotifyチャートからもその無類の人気が伺える。日本トップ50チャート(11月17日時点)においては、1位の“Pretender”を筆頭に、“宿命”“イエスタデイ”“ノーダウト”“115万キロのフィルム”“Stand By You”とトップ10に6曲がランクインしている。

今年の『NHK紅白歌合戦』にも初出場が決まった彼ら。昨年の米津玄師やあいみょんと同じく、そこをきっかけに「ヒゲダン」の名前を知ることになる人も多いだろう。2020年に入っても“Pretender”のロングヒットが続くことは確実で、「新しい時代の国民的バンド」としての彼らの存在感はさらに強まっていくはずだ。

Official髭男dism“Pretender“を聴く(Spotifyを開く

ブレイクの理由の根幹は、普遍的なポップセンスを湛えた「楽曲の良さ」。タイアップ曲も多数

なぜ、Official髭男dismは、これほどのブレイクを果たしたのか?

その理由の根幹は曲の良さにある。特にストリーミングサービスにおいては、ルックスやアイドル的な人気よりも「繰り返し曲を聴きたくなるかどうか」が重要になる。CDのセールスランキングは熱狂的なファンの数によって左右されるが、ストリーミングチャートにおいては、多くの人に受け入れられる楽曲の普遍的なポップセンスが決め手になる。Spotifyではブレイク以前の早い時期から「Tokyo Super Hits」や「Early Noise」といった主要プレイリストに彼らの楽曲をリストインしており、当時からかなり聴かれていたという。

もちろん、背景にはタイアップによるメディア露出も大きい。メジャーデビュー曲“ノーダウト”は、月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』主題歌に抜擢された一曲。“Pretender”は映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』の主題歌で、今年10月にリリースされたメジャー1stアルバム『Traveler』には、夏の高校野球応援ソングとして書き下ろされた“宿命”、映画『HELLO WORLD』主題歌の“イエスタデイ”、Apple Music CMソングに選ばれた“Stand By You”など、タイアップ曲を多数収録している。テレビで彼らの楽曲を聴いて「いつの間にか耳に馴染んでいた」という人も多いはずだ。

Official髭男dism『Traveler』を聴く(Spotifyを開く

とはいえ、ドラマやCMを通してメディアに多く露出した曲は他にも沢山ある。その中で、彼らの楽曲がなぜ飛び抜けた支持を集めたのだろうか?

「とても先進的だけれど、受け入れられる」。新しさと親しみやすさの共存

その秘密は「MAYA」という言葉で表すことができる。

「MAYA」というのは、「インダストリアルデザインの父」として知られる、20世紀を代表するデザイナーのひとり、レイモンド・ローウィが掲げたコンセプトだ。「Most Advanced Yet Acceptable」の略語で、つまり「とても先進的だけれど、受け入れられる」という意味。ローウィは大衆が何を好むかを直感的に捉え、それを言語化していた。「新しさ」と「親しみやすさ」を兼ね備えたものがヒットする――20世紀半ばにそう喝破した彼の思想は、その後多くの研究によって実証されている。

Official髭男dismの楽曲は、この「MAYA」の魅力を持ったものが多い。海外の最先端のポップミュージックに通じるサウンドメイキングが「新しさ」として、また誰もが口ずさめるグッドメロディーと藤原の表現力豊かなボーカルが「親しみやすさ」として機能する。

Official髭男dism“ノーダウト”を聴く(Spotifyを開く

フロントマンでメインソングライターの藤原聡(Vo,Pf)は、もともとマイケル・ジャクソンやスティーヴィー・ワンダーなどをルーツに持ちつつ、aikoを敬愛しJ-POPも愛好してきたという雑食的な音楽嗜好の持ち主。小笹大輔(Gt)、楢崎誠(Ba,Sax)、松浦匡希(Dr)というメンバーそれぞれもプロデューサー的な感覚を持ち、それぞれバラバラなルーツを持ちつつも、みな海外の音楽シーンの潮流に大きな刺激と影響を受けている。

チャンス・ザ・ラッパーなどの影響も。J-POPに多様なアイデアを持ち込む

そして、彼ら自身、メジャーデビュー後に目覚ましい成長を果たしている。

2018年1月放送の『関ジャム 完全燃SHOW』で蔦谷好位置が「ブルーノ・マーズの新曲かと思った」と紹介しブレイクのきっかけの一つになった“Tell Me Baby”など、インディーズ時代の彼らはファンクやブラックミュージックの洒脱なテイストを活かしたピアノポップが持ち味だった。

Official髭男dism“Tell Me Baby”を聴く(Spotifyを開く

しかし、2018年10月にリリースされた“Stand By You”は、細かく刻むハイハットやハンドクラップのビートを活かしたダンスミュージック的な構造を持つ一曲。彼らのルーツにも、これまでのJ-POPの常識にもとらわれないアレンジがなされている。

Official髭男dism“Stand By You”を聴く(Spotifyを開く

『Stand By You EP』リリース当時のインタビューで藤原は「デビュー時には想像もしてなかったアイディアや音の作り方、選択肢が自分達の中に生まれていた」(『MUSICA』2018年11月号)と語っている。プロデューサーの蔦谷好位置から受けた刺激、チャンス・ザ・ラッパーやジェス・グリンなどからの影響をもとに、ゴスペルのエッセンスをJ-POPにどう取り入れるかを意識したという。

“Pretender”や“宿命”で実現した藤原聡のねらい

「自分達がやりたい音楽をやっていった結果、それがこの時代のJ-POPとしてエポックメイキングなものになっていければいいなって思ってます」

前述のインタビュー内でこう語っていた藤原の言葉は、続く“Pretender”や“宿命”で実現する。“Pretender”は、映画制作陣からのリクエストに応えてこれまでの彼らのルーツになかったUKロックのテイストを取り入れた、彼らにとっても新機軸となった一曲。小笹大輔の弾くイントロのギターフレーズが印象的な役割を果たしている。

そして蔦谷好位置と再びタッグを組んだ“宿命”は、ニューヨークを拠点に活動するプロデューサーデュオBrasstracksのスタイルをJ-POPのスタイルに翻案したかのような、ホーンのカウンターメロディが印象的な一曲。吹奏楽部が活躍する甲子園の風景も思い浮かぶ。

Official髭男dism“宿命”を聴く(Spotifyを開く

「新しいけど耳に馴染む」ポップセンスの源にある、巧みな言葉遣いや、音作りへのこだわり

さらに、巧みに韻を踏む歌詞の響きも、大きなポイントだ。

“宿命”では<奇跡じゃなくていい 美しくなくていい 生き甲斐ってやつが光り輝くから 切れないバッテリー 魂の限り>と、「い」の母音で頭韻を踏んでいく。“Pretender”でも<辛いけど否めない でも離れ難いのさ その髪に触れただけで 痛いや いやでも 甘いな いやいや>と、やはり「い」の音を繰り返していくことで響きのリズムを生み出している。

アルバム『Traveler』制作にあたっては、ソフト音源やアナログシンセ、ビンテージ楽器も多数導入したという。『Sound & Recording Magazine2019年12月号のインタビューでは、アレンジやサウンドメイキングの技術的な手法について語っている。

藤原は「いろんな選択肢を出した上で最良の音楽、自分が一番好きだと思える音楽を選びたい」と述べ、一つの楽曲を作る上でメロディを何パターンも作ったり、50Hz以下の低域を意識しながらサウンドメイキングを進めていったりしたことも明かしている。

Official髭男dism“イエスタデイ”を聴く(Spotifyを開く

こうした巧みな言葉づかいや、アレンジと音作りへの細かいこだわりが、彼らの「新しいけど耳に馴染む」ポップセンスの源泉となっている。

ストリーミング時代の統計ではなく、「グッド・ミュージックに徹する」という姿勢

ちなみに、同誌のインタビューでは「ストリーミングサービスにおいては音圧感を稼ぐために音数を減らしたアレンジが有利」「ギターの音がスキップされやすい」などと言われる昨今の楽曲制作の傾向について、藤原はこう言い切っている。

「音数がどうのとか、ギターがどうのとかは統計を取ったら結果として出てくるのかもしれませんが、自分たちが作っているのは統計でも数字でもなくて音楽なわけだし、周りがどうであれ自分たちが一番グッド・ミュージックだと思うものを選ぶ義務があると思います。音楽で生きていくのであれば」(『Sound & Recording Magazine』2019年10月号)

彼が言う通り、「グッド・ミュージックに徹する」という選択肢を選び通したことが、Official髭男dismの成功の最大の理由なのではないかと思う。

Official髭男dism『エスカパレード』を聴く(Spotifyを開く

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