Foalsの歩みとともにライター4人が語る、2010年代のUKロック

Foalsの歩みとともにライター4人が語る、2010年代のUKロック

2019/11/29
Foals『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1&2』
インタビュー・テキスト
天野龍太郎
編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

ラップミュージック中心の時代に、Foalsはロックバンドとしての使命や矜持を体現している

―『マーキュリー賞』について言うと、2016年のSkeptaと2019年のDaveの受賞は象徴的。UKの音楽シーンもそれだけラップミュージック中心になってきているわけです。そんななかで善戦を続けているFoalsはすごいと思います。

天井:2019年はIdles、Fontaines D.C.、black midiとロックバンドがたくさんノミネートされていて、盛り返しも感じますよね。特に授賞式でのblack midiのパフォーマンスについてはヤニスも絶賛していました。


Fontaines D.C.『Dogrel』(2019年)収録曲(Spotifyで聴く


black midi『Schlagenheim』(2019年)収録曲(Spotifyで聴く

小熊:あと、『Everything Not Saved Will Be Lost』はたしかに冒険的だけど、The 1975の『A Brief Inquiry Into Online Relationships』(2018年)ほど越境的というわけではない。Foalsもポストジャンル化が進行する現状と向き合っているけど、一方でロックバンドとしての型にもこだわっていますよね。

―Radiohead、Arctic Monkeys、The 1975のようなゲームチェンジャーではないんだけど……。

小熊:ゲームを変えるっていうより、ブレない軸がある。

照沼:ロックバンドが新しい音楽を作ろうすると、たいてい他の畑に行きがちじゃないですか。でも、Foalsは新しいことをしながら、ちゃんとロックバンドであることを体現している。

天井:今回の新作はサウスロンドンのペッカムで作ったんですよね。いろいろなカルチャーが混じり合うサウスロンドンから刺激を受けていて、それもサウンドが広がった背景としてあるんじゃないかな。

小熊:ちゃんと今のシーンを見ているんですね。

―DYGLやThe fin.、yahyelといった日本のバンドもロンドンに向かっていますよね。小袋成彬さんも今ロンドンにいますし。日本でもサウスロンドン、ひいてはロンドンが盛り上がっている、という認識は共有されてきたと思います。そんな場所にオックスフォード出身のFoalsが行ったっていうのも面白い。

目前に迫った2020年代、UKロックの行方は?

―すでに2020年代を占う1、2年になっているわけですが、どうなっていくんでしょう。ラップに勢いがあってロックはダメ、みたいなヘゲモニーの奪い合いには興味がないのですが、それでも個人的にはロックが大事になってくる気がします。

サウスロンドンのバンドたちやアイルランドのFontaines D.C.など、音楽的にそれほど新鮮ではありませんが、これだけ役者が揃っていたら何かが起きそうだという予感がする。アメリカのインディーロックやベッドルームポップは似たり寄ったりのゆるくてチルい音ばかりで隘路に陥っていると思うので、それとは対照的です。

照沼:レコードやフィルムカメラが流行っているのと同じように、音楽面でもクォンタイズされた太いビートに飽きて揺れたリズムが流行ったり、オートチューンを使っていない生の歌が流行ったりしそうな気もします。そういう流れのなかで、ロックバンドのサウンドやあり方が大事になってくるんじゃないかなと思います。ギターなんて構造上絶対にチューニング合わないものだけど、だからこそという。

小熊:本当にピンチだった一時期に比べると、最近はロックを聴くのが楽しいです。ライブが重要視される時代には、ロックバンドのアドバンテージが活きてきそう。何人も集まって楽器を演奏するとかめんどくさいけど、みんなそろそろ簡単にできる音楽は「もういいかな」って飽きはじめてないですか。

天井:UKロックは10年前もすごく盛り上がって、それが2010年を跨いで萎んだってことを考えると、あまり楽観的な見方はできないんですけどね。でも今、ロックバンドは勢いを取り戻しつつあるし、そのなかにあってFoalsは精神的支柱といっていい存在感がある。今回の2枚のアルバムは、それを示したのかなと思います。


Foals『Everything Not Saved Will Be Lost - Part 1』収録曲(Spotifyで聴く


Foals『Everything Not Saved Will Be Lost - Part 2』収録曲(Spotifyで聴く

小熊:これからまた時代が変化していくにあたって、Foalsがシーンに居続けることで、彼らが指針や評価軸になってくる。イギリスで長く続けて、アメリカでも存在感があって、ライブも最高だし売上もすごい。しかも、今がベストと言い切れる。今日はここ10年間を振り返りましたけど、そんなバンドは他にいなかったですよね。

―ある意味、UKロックバンドの理想像というか。

小熊:こうやって話すまでそんなこと思っていなかったけど、Foalsって本当にすごいバンドだなー。1stアルバムの頃はやんちゃな感じだったのに……。

―いまやヤニスはムキムキで、胸毛も出していて、「ダッド」っぽい(笑)。

小熊:長く第一線にいるためには、鍛えるのが大事ってことかな。

―マッチョが正しいっていうのは、超嫌な結論なんですけど(笑)。

天井:まあでも、それはライブが大事っていうことにもつながるし。

小熊:メディアというのは常にセンセーショナルな動きを追い求めるもので、彼らのように派手な変化はないけど、地道にアップデートし続けてきたバンドって冷遇されがちじゃないですか。でも、こうやって振り返ると、本当に偉大だったのは誰だったのかよくわかる。ずっと彼らを信じてきたファンは幸せだろうし、これから出会うのでも全然遅くないと思いますね。

CAP:2020年3月、Foalsの単独来日ツアーが決定している
CAP:2020年3月、Foalsの単独来日ツアーが決定している(

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リリース情報

『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』(CD)
Foals
『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』(CD)

2019年10月23日(水)発売
価格:2,640円(税込)
SICX141

1. Red Desert
2. The Runner
3. Wash Off
4. Black Bull
5. Like Lightning
6. Dreaming Of
7. Ikaria
8. 10,000 Ft.
9. Into the Surf
10. Neptune

『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』(CD)
Foals
『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』(CD)

2019年3月8日(金)発売
価格:2,640円(税込)
SICX122

1. Moonlight
2. Exits
3. White Onions
4. In Degrees
5. Syrups
6. On The Luna
7. Cafe D'Athens
8. Surf, Pt. 1
9. Sunday
10.I'm Done With The World (& It's Done With Me)

イベント情報

『Foals 来日ツアー』

2020年3月3日(火)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2020年3月4日(水)
会場:大阪府 BIGCAT

2020年3月5日(木)
会場:東京都 新木場STUDIO COAST

プロフィール

Foals
Foals(ふぉーるず)

英オックスフォード出身、ヤニス・フィリッパケス(Vo,Gt)、ジミー・スミス(Gt)、ジャック・ベヴァン(Dr)、エドウィン・コングリーヴ(Key)からなる4人組のロックバンド。全オリジナルアルバムが、全英チャートにてTOP10入りを果たしている。ゼロ年代から「非オーソドックス」を探求し続け、この10年の間には海外大型フェスティバルのヘッドライナーを飾る唯一無二なバンドへと進化を遂げ、2019年、共通のテーマ、アートワーク、タイトルをもつ、2枚の新作『Everything Not Saved Will Be Lost』を発表。その『Part 1』が3月8日に全世界で発売となり、『SUMMER SONIC 2019』では圧倒的なライブを披露した。『Part 2』は10月にリリースされ、初の全英1位を獲得した。2020年には6年ぶりとなる単独ツアーが決定している。

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