Foalsの歩みとともにライター4人が語る、2010年代のUKロック

Foalsの歩みとともにライター4人が語る、2010年代のUKロック

2019/11/29
Foals『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1&2』
インタビュー・テキスト
天野龍太郎
編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「バンド」というものの捉え方も変わっていった2010年代

―あの、みなさん眉間にシワを寄せないでください(笑)。

天井:トム・ヨークもこの頃からJamie xxやLAビートの中心人物であるFlying Lotusと付き合いがあったんじゃないかな。トム・ヨークが『Low End Theory』(ロサンゼルスで毎週水曜日に開催されていたパーティー。LAビートシーンの基盤となるイベントであったが、2018年8月に終了)でDJしたこともニュースになりましたよね。Radioheadの『The King of Limbs』は(2011年)そのタイミングでのリリースで。


Radiohead『The King of Limbs』収録曲(Spotifyで聴く

小熊:ここを境にサポートドラマーのクライヴ・ディーマーが入って(ライブは)6人編成になるんですよね。これは他のバンドにも勇気を与えた気がします。やりたいことを追求するために、外から上手いやつを入れてもいいんだって(笑)。

―Radioheadは不動の5人だったのに(笑)。

照沼:『Kid A』(2000年)の頃、エド・オブライエン(Gt)とかフィリップ・セルウェイ(Dr)とか、よく辞めなかったですよね。1990年代末~2000年頃の日本でも、BLANKEY JET CITYが打ち込みを導入したときにバンド内で揉めたってエピソードがありますけど……。

小熊:ドラムがやることなくなるだろって(笑)。最近のバンドは、そんなことで揉めたりしないですよね。最終的なアウトプットがよくなるなら、まったく犠牲を惜しまない。Vampire Weekendも数年前、重要人物のロスタム・バトマングリが抜けてからは、何人もサポートメンバーを迎えてライブしているし、最新作も中心人物のエズラ・クーニグによるソロ作みたいな感じじゃないですか。

―価値観が変わって、「バンド」の捉え方が柔軟になり、プロジェクト化していったのもこの10年。アルバムやライブというプロジェクトに向けて、誰が参加してもいいんだと。

天井:それでいうと、Dirty Projectorsもそうですよね。一時期はバンドと呼べるような活動形態だったけど、2017年の『Dirty Projectors』を機にデイヴ・ロングストレスのソロプロジェクトの体裁が強まっている。そのときやりたい音楽に合わせてメンバーを組む、という。

潮目が大きく変わったのは、2013年だった?

―Foalsに話を戻すと、3rdアルバム『Holy Fire』が2013年。その前年、2012年にジェイク・バグがデビューアルバム『Jake Bugg』を出しています。彼は久しぶりに出てきた労働者階級を代表するロックシンガー。英国はガチガチの階級社会なので、Oasisが典型的なように、ロックで成功することは成り上がるパターンのひとつだった。ただブレイディみかこさんも言っていましたが、ワーキングクラスから音楽で成功する人が減っている。そのなかでヒーローとして現れたのがジェイク・バグでもありました。

小熊:当時はセンセーショナルな存在だったけど、最近はどうなんだろう。そういう人こそ成り上がったあと、どう振舞うべきかは悩ましい問題で。


ジェイク・バグ『Jake Bugg』収録曲(Spotifyで聴く

―また2013年にはThe 1975とChvrchesがアルバムデビューしています。両者はロックというより、今のポップシーンの最前線にいるバンドですね。

小熊:アメリカのロックでは、Vampire Weekendの『Modern Vampires of the City』が2013年。あれは「ブルックリン最後の輝き」って感じで、いよいよ北米インディーも雲行きが怪しくなってきたぞと。


Vampire Weekend『Modern Vampires of the City』収録曲(Spotifyで聴く

天井:Arcade FireがLCD Soundsytemのジェームス・マーフィーと『Reflektor』を作ったのも同じ年。まさに北米インディーの最後の輝きという感じで、象徴的な組み合わせだと思う。それと、2010年代に入って以降、USではローカルシーンの存在もほとんど取り沙汰されなくなりましたよね。UKはどうなんだろう?


Arcade Fire『Reflektor』収録曲(Spotifyで聴く

小熊:Peace、Swim Deepなどを中心としたバーミンガムのシーンがありましたけど、今思えば小粒でしたよね。『snoozer』が2011年、『CROSSBEAT』が2013年に休刊して、彼らを積極的に紹介する洋楽メディアも少なくなっていましたし。

照沼:この頃には聴き手のほうが早くなっていましたね。

小熊:音楽ブログも国内外で流行ってたし、みんなTwitterを使いはじめて、ネットがとにかく盛り上がっていましたから。

―メディアが追いつけていないと。僕も『Pitchfork』ばかり読んでいました。

小熊:話が逸れたけど、ロック苦難の時代がはじまっていくなかで、Foalsは3枚目からアメリカでも売れはじめたんですよね。

―その右肩上がりな躍進ぶりはどうしてなんでしょう?

小熊:Imagine Dragonsの1stアルバム『Night Visions』が2012年ですよね。2010年代のアメリカで、一番支持を集めたロックバンドは彼らだった。でも、それは旧来の「ロック」とはだいぶ形の異なるものだったと。


Imagine Dragons『Night Visions』(2012年)収録曲(Spotifyで聴く

―EDMフェスやスタジアムにも対応できるエレクトロニックで派手なロックっていうことですよね。Panic! at the Discoやtwenty one pilotsもそう。

小熊:批評的な評価はさておき、チャートを席巻していたのはそういうバンドだったわけで。Foalsはそことも戦おうとしていた。

天井:UKでは、Bring Me The Horizonがブレイクするのも2013年の『Sempiternal』ですよね。


Bring Me The Horizon『Sempiternal』収録曲(Spotifyで聴く

―Foalsがシャウトやヘビーネスを押し出していくのも『Holy Fire』から 。この後、UKではヘビーなRoyal BloodやパンキッシュなSlavesのようなバンドが支持を得ていきます。

天井:Foo FightersやQueens of the Stone Ageは相変わらずアメリカを代表する「ロック」だったわけで、それに最適化した変化の方向性だったということですよね。


Foals『Holy Fire』収録曲(Spotifyで聴く

小熊:2013年はArctic Monkeysの『AM』も重要で。ヒップホップとハードロックとの合わせ技によって、念願のアメリカ進出を成し遂げたアルバムです。

昔からイギリスのバンドはアメリカ進出をひとつの夢にしてきましたけど、グローバル化が進む現代では、そこの意味合いも変わってきた気がしますね。外に出ていかないとどうにもならないという危機意識が感じられるというか。


Arctic Monkeys『AM』収録曲(Spotifyで聴く

小熊:日本のバンドも「ガラパゴスで完結してはいけない」と話す人が増えてきてるじゃないですか。それこそ最近のUKバンド、Catfish and the BottlemenとかBlossomsは本国のチャートで健闘しているし、音楽もいいんだけど、やや内側に込もっているように見えたりもして……。

―正直、日本市場でも苦戦していますよね。The Amazonsなどを聴いていても感じますが、イギリスのロックがドメスティックでローカルなものになっていったように感じます。以前からそうだとも言えますが、どこか伝統芸能的というか。

インディーロックのポップ化と、デンマークやスペインなどローカルシーンの勃興

―あと、2013年はSavagesがデビューアルバム『Silence Yourself』を出しているもの重要です。フェミニズム的だし、音楽はポストパンク的。今のサウスロンドンのサウンドとも無関係ではないはず。

小熊:FoalsはSavagesとも仲がいいらしいですね。

Savages『Silence Yourself』収録曲(Spotifyで聴く

照沼:Iceageの2ndアルバム『You're Nothing』も2013年です。

天井:Iceageが出てきたデンマークのコペンハーゲンシーンもそうですし、スペインのHindsやMourn、アイルランドのGirl Bandとか、非UK的なローカルシーンに注目が集まっていきましたよね。

小熊:一方、アメリカではHAIMのようなバンドがインディーロックをポップ化していって。

―Foster the PeopleやFun.もそうですね。

天井:Fun.といえば、今やプロデューサーとして売れっ子のジャック・アントノフですね。

小熊:最近だと、2019年のベストと言われるラナ・デル・レイの作品にも携わっていますよね。彼がこのバンドにいたのも象徴的ですけど、モダンな形でヒップホップやR&B、メインストリームとの接続を図った最初期のバンドがFun.だった気がするんですよ。実際に売れてますし。


Fun.『Some Nights』(2012年)収録曲(Spotifyで聴く

照沼:The 1975のデビュー時にインタビューしたんですけど、「俺たちは白人の男が4人集まったバンドではあるけど、いわゆるインディーバンドじゃない。俺はマイケル・ジャクソンが好きなんだ」って言っていましたね。

小熊:最初からポップシーンを見ていたんですよね。The 1975もFun.も当時はチャラく見えたけど、実は彼らのほうが正しかった。


The 1975『The 1975』(2013年)収録曲(Spotifyで聴く

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リリース情報

『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』(CD)
Foals
『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』(CD)

2019年10月23日(水)発売
価格:2,640円(税込)
SICX141

1. Red Desert
2. The Runner
3. Wash Off
4. Black Bull
5. Like Lightning
6. Dreaming Of
7. Ikaria
8. 10,000 Ft.
9. Into the Surf
10. Neptune

『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』(CD)
Foals
『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』(CD)

2019年3月8日(金)発売
価格:2,640円(税込)
SICX122

1. Moonlight
2. Exits
3. White Onions
4. In Degrees
5. Syrups
6. On The Luna
7. Cafe D'Athens
8. Surf, Pt. 1
9. Sunday
10.I'm Done With The World (& It's Done With Me)

イベント情報

『Foals 来日ツアー』

2020年3月3日(火)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2020年3月4日(水)
会場:大阪府 BIGCAT

2020年3月5日(木)
会場:東京都 新木場STUDIO COAST

プロフィール

Foals
Foals(ふぉーるず)

英オックスフォード出身、ヤニス・フィリッパケス(Vo,Gt)、ジミー・スミス(Gt)、ジャック・ベヴァン(Dr)、エドウィン・コングリーヴ(Key)からなる4人組のロックバンド。全オリジナルアルバムが、全英チャートにてTOP10入りを果たしている。ゼロ年代から「非オーソドックス」を探求し続け、この10年の間には海外大型フェスティバルのヘッドライナーを飾る唯一無二なバンドへと進化を遂げ、2019年、共通のテーマ、アートワーク、タイトルをもつ、2枚の新作『Everything Not Saved Will Be Lost』を発表。その『Part 1』が3月8日に全世界で発売となり、『SUMMER SONIC 2019』では圧倒的なライブを披露した。『Part 2』は10月にリリースされ、初の全英1位を獲得した。2020年には6年ぶりとなる単独ツアーが決定している。

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