Foalsの歩みとともにライター4人が語る、2010年代のUKロック

Foalsの歩みとともにライター4人が語る、2010年代のUKロック

Foals『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1&2』
インタビュー・テキスト
天野龍太郎
編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

2008年、デビューアルバム『Antidotes』でUKロックシーンを席巻したFoals。Radioheadと同郷のオックスフォードで結成された彼らは、同時代のバンドたちがシーンの最前線から退場していくなか、力強いライブバンドとして、独自の美学を貫くアルバムバンドとして、この10年間黙々と表現を研ぎ澄ませていった。その独立独歩の物語は、米国市場でも受け入れられるほどの人気と高い評価とを両立させる現在の姿へと続く。

そんなFoalsが新作『Everything Not Saved Will Be Lost - Part 1』と『Part 2』を立て続けにリリースした。ヘビーロックからエレクトロニックミュージック、アフロポップまでを縦横無尽に取り込んで血肉とし、みずからのアートフォームに落とし込んだその充実ぶり、作品の厚みは、バンドの尽きせぬ創造力と勢いづいたモードを伝えている。さらに、2020年3月には単独来日ツアーを開催することも決定。ライブバンド=Foalsのパフォーマンスを存分に堪能できるまたとない機会だ。

これを機に、今回は音楽ライターの天井潤之介、小熊俊哉、照沼健太とともに、Foalsの歩みとUKを中心としたロックの10年史を振り返った。「停滞」や「衰退」が叫ばれる英国のロックシーンで何が起こっていたのか? 2010年代のロックミュージックとは何であるのか? そこから浮かび上がるFoalsの独自性とは? 来たる2020年代を見据え、たった10年でドラスティックに変化した音楽シーンにおける「ロック」の可能性を問う。

プレイリスト『2010年代とUKロック』を聴く(Spotifyを開く

2010年代を振り返る前に。2000年代末、Foalsがデビューを果たしたロックシーンの状況

―2000年代のUKでは、USと連動してガレージロックリバイバルとポストパンクリバイバルがあり、そのあとニューレイブが起こり、小規模だけどテムズビートのシーンも注目を集め、と見取り図が描きやすいんです。一方、Foalsの結成は2005年で、1stアルバム『Antidotes』のリリースは2008年。わかりやすいムーブメントがなくなってきた頃に出てきたので、彼らには苦難の道を歩んできたという印象があります。

照沼:FoalsはKitsunéのコンピ(2007年リリースの『Kitsuné Maison Compilation 4』)にも参加していたし、ニューレイブの範疇だったはずじゃないですかね。ただ、あえてあの辺の流れには乗らずに違う方向に行ったバンドだと思っています。

天井:僕は、ニューレイブのサブジャンル的な流れで短期間流行った「ニューエキセントリック」のど真ん中に出てきたバンドっていう印象ですかね。マスロックの要素もあって、アメリカでBattlesが『Mirrored』(2007年)でアルバムデビューしたこととも対応していましたし。

『Kitsuné Maison Compilation 4』収録のFoals“Hummer”を聴く(Spotifyを開く

Battles『Mirrored』を聴く(Spotifyを開く

―もともとマスロックをやっていたんですよね。初期の曲はUKのバンドとは思えない音です。

天井:当時ニューヨークのブルックリンで注目されていた、Vampire WeekendやAnimal Collectiveに通じるアフロポップの要素もある。だから、主にUSを追っていた僕にとってはすんなり聴けましたね。

小熊:彼らは最初からアメリカのシーンを意識していましたよね。そこは当時のUKバンドでは珍しかったし、このあとの飛躍にもつながるポイントだと思います。実際、Foalsの1stアルバムは、ブルックリンシーンの頂点に立っていたTV on the Radioのデイヴ・シーテックがプロデューサーだったわけで。

あとは2005~2007年にメンバーが聴いていた曲のプレイリストっていうのがあるんですよ。ドラマーのジャック・ビーヴァンが選んでるんですが、Battles、Darty Projectors、LCD Soundsystemといったアメリカ勢に、Justiceなどクラブミュージックも積極的に聴いていたのがよくわかる。

プレイリスト『Vanidotes [Curated by Jack]』を聴く(Spotifyを開く

―Foalsはボーカリスト / ギタリストのヤニス・フィリッパケスとドラマーのジャックが重要だと思います。

小熊:The 1975と同じ構図ですね。

照沼:Arctic Monkeysも。ドラマーの音楽の趣味はバンドにとって大事かも。

Foals(ふぉーるず) / 撮影:Mitch Ikeda<br>英オックスフォード出身、4人組のロックバンド。全オリジナルアルバムが、全英チャートにてTOP10入りを果たしている。ゼロ年代から「非オーソドックス」を探求し続け、この10年の間には海外大型フェスティバルのヘッドライナーを飾る唯一無二なバンドへと進化を遂げる。2019年、共通のテーマ、アートワーク、タイトルをもつ、2枚の新作『Everything Not Saved Will Be Lost』を発表。その『Part 2』は10月にリリースされ、初の全英1位を獲得した。2020年には6年ぶりとなる単独ツアーが決定している。
Foals(ふぉーるず) / 撮影:Mitch Ikeda
英オックスフォード出身、4人組のロックバンド。全オリジナルアルバムが、全英チャートにてTOP10入りを果たしている。ゼロ年代から「非オーソドックス」を探求し続け、この10年の間には海外大型フェスティバルのヘッドライナーを飾る唯一無二なバンドへと進化を遂げる。2019年、共通のテーマ、アートワーク、タイトルをもつ、2枚の新作『Everything Not Saved Will Be Lost』を発表。その『Part 2』は10月にリリースされ、初の全英1位を獲得した。2020年には6年ぶりとなる単独ツアーが決定している。

小熊:今回、UKの音楽を俯瞰的に振り返るにあたって『マーキュリー賞』の話をしたほうがいいですよね(外部リンクを開く)。

『マーキュリー賞』について説明しておくと、英国もしくはアイルランドで最も優れたアルバムに対して贈られる音楽賞で、毎年12枚アルバムがノミネートされ、そこから選ばれた一作が受賞し、授賞式はテレビでも放送される。ミュージシャンやメディア関係者も審査員を務め、審査基準もセールスではなく内容重視。だから、12枚のノミネート作は、その年にイギリスの音楽シーンで何が起こったかを知るうえでひとつの指標になると。

Foalsも2010年以降、3作がノミネートされています。彼らのデビュー前夜を振り返ると、2006年はガレージロックを鳴らしたArctic Monkeys、翌年はニューレイブの代表格であるKlaxonsの各デビュー作が受賞。UKロックに若さと勢いがある時代でした。

Foals『Antidotes』を聴く(Spotifyを開く

―2008年のノミネートは、Arctic Monkeysのアレックス・ターナーとThe Rascalsのマイルズ・ケインによるThe Last Shadow Puppets、Radiohead『In Rainbows』など。受賞はElbow。

照沼:イギリス人っぽい(笑)。

―ちなみに、Foalsの同期として2008年にアルバムデビューしたのがFriendly Fires、These New Puritans、Black Kidsなど。2007年はThe View、The Horrors、The Maccabeesなど。ガレージロックリバイバルとニューレイヴの残り香を感じます。

天井:今挙がったバンドは当時だいたい『サマソニ』に来ていて、盛り上がった記憶がありますね。「『サマソニ』はUK新人バンドの目利きがある」とか言われていたのもこの頃で(外部リンクを開く)。

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リリース情報

『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』(CD)
Foals
『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』(CD)

2019年10月23日(水)発売
価格:2,640円(税込)
SICX141

1. Red Desert
2. The Runner
3. Wash Off
4. Black Bull
5. Like Lightning
6. Dreaming Of
7. Ikaria
8. 10,000 Ft.
9. Into the Surf
10. Neptune

『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』(CD)
Foals
『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』(CD)

2019年3月8日(金)発売
価格:2,640円(税込)
SICX122

1. Moonlight
2. Exits
3. White Onions
4. In Degrees
5. Syrups
6. On The Luna
7. Cafe D'Athens
8. Surf, Pt. 1
9. Sunday
10.I'm Done With The World (& It's Done With Me)

イベント情報

『Foals 来日ツアー』

2020年3月3日(火)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2020年3月4日(水)
会場:大阪府 BIGCAT

2020年3月5日(木)
会場:東京都 新木場STUDIO COAST

プロフィール

Foals
Foals(ふぉーるず)

英オックスフォード出身、ヤニス・フィリッパケス(Vo,Gt)、ジミー・スミス(Gt)、ジャック・ベヴァン(Dr)、エドウィン・コングリーヴ(Key)からなる4人組のロックバンド。全オリジナルアルバムが、全英チャートにてTOP10入りを果たしている。ゼロ年代から「非オーソドックス」を探求し続け、この10年の間には海外大型フェスティバルのヘッドライナーを飾る唯一無二なバンドへと進化を遂げ、2019年、共通のテーマ、アートワーク、タイトルをもつ、2枚の新作『Everything Not Saved Will Be Lost』を発表。その『Part 1』が3月8日に全世界で発売となり、『SUMMER SONIC 2019』では圧倒的なライブを披露した。『Part 2』は10月にリリースされ、初の全英1位を獲得した。2020年には6年ぶりとなる単独ツアーが決定している。

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