SNSギタリストの可能性 世界でバズを起こすIchika Nitoの歩み

Instagramに投稿した演奏動画でバズが起こり、世界にその名が知れ渡ったギタリスト・Ichika Nito(以下、Ichika)。ジャズとメタルを背景に、ピアノを弾く原理で両手を用いるその独創的なプレイが注目を集め、Instagramのフォロワーは約50万人、YouTubeチャンネルの登録者は約170万人(2021年10月現在)、その大半が海外のファンという、特殊なポジションを築き上げている。今年に入ってからはたなか(前職・ぼくのりりっくのぼうよみ)とササノマリイとともに新バンドDiosをスタートさせ、国内での注目度も急上昇中だ。

これまで「ギタリスト」としての側面がピックアップされることの多かったIchikaだが、今回の取材では表現者としての行動原理に迫るとともに、「なぜIchikaが海外のリスナーやミュージシャンから求められるのか?」を、アニメやゲームなど海外で人気の日本カルチャーとも結びつけながら掘り下げていった。また、SNSを通じた活動のなかで何を感じ、いまどこを目指しているのかについてもじっくりと話してもらった。YouTubeでは言葉を発しないIchikaの聡明な語り口から、まだ見ぬ物語の行く末を期待せずにはいられない。

Instagramで起こったバズ。「YouTubeでも同じことが起こるか検証した」

―IchikaさんはInstagramに投稿した演奏動画でバズが起こって、海外の音楽ファンに広く知られるようになったわけですよね。

Ichika:動画の投稿は、自分がギターでつくった曲を聴いてほしくて始めたことでした。当時ぼくは大学生で、就職のことも頭にあったので、最初は「海外を意識して」というより「友達に聴いてもらうため」くらいの感覚だったんです。

ただ、海外にギタリストの動画を紹介する大きなチャンネルがあるのは知っていたので、そういうところに見つかるようにタグはつけていて。それがたまたま引っかかって、アメリカで人気のチャンネルで紹介されたんです。

最初にバズが起きた2017年9月の演奏動画。自身の楽曲“a bell is not a bell”をプレイしている。

Ichika:それから、そのチャンネルを好きで見てる有名なハリウッド女優の方が、身内の俳優とかモデル、ミュージシャンの間でぼくの動画を回してくれたみたいで。かれらがそれぞれのファンに向けて、「やばいやつがいる」と広めてくれたおかげで、一気に10万人くらいフォロワーが増えたんです。

Ichika(いちか)
イギリスのギター雑誌『Total Guitar』の読者が選ぶ「史上最高のギタリスト100選」で「現在最高のギタリスト」として8位にランクイン。2018年からはゲスの極み乙女。の川谷絵音らとインストバンド「ichikoro」でも活動している。Dream Theaterのジョン・ペトルーシなど著名なギタリストはもちろん、ゼッドやマーティン・ギャリックス、ホールジーなどの楽曲をプロデュースするジョン・カニンガムといった別ジャンルの世界的アーティストたちからも厚い支持を受けている。Ichikaの研ぎ澄まされた感性と唯一無二のギタースタイル、トーン、テクニックには、海外からも楽曲提供や楽曲参加のラブコールが絶えない。去年から始めたYouTubeは現在登録者数が169万人越えと、ワールドワイドな注目の高さがうかがえる、いま日本で際立っている知っておくべきギタリスト。

―いまではInstagramのフォロワーが約50万人、さらには、そのあとに始めたYouTubeチャンネルの登録者がすでに約170万人と、すごいことになっていますね。

Ichika:Instagramのバズはある意味すごく偶発的で、再現性がないと思ったんですよね。不確かなものにただ乗っかるのは嫌だったので、YouTubeでも同じようなことをやって、同じような状況になるか検証しようと思ったんです。

YouTubeでも同じようにフォロワーが増えたら、たまたまじゃなくてちゃんと自分のギターが認められたんだって、確証が得られる。そこは自分が前に進むためにすごく大事な部分で、結果YouTubeも同じように伸びたから、大丈夫だなって。

現在IchikaのYouTubeチャンネルで最も再生されている演奏動画。「彼女にアピールしたいけど、ギターと20秒しかないとき」というタイトル

―当時から他のギタリストの動画はよく見ていたんですか?

Ichika:そうですね。ただ、いまでこそ「ネオソウルギター」みたいなひとつのカルチャーができあがっていますが、当時はまだマテウス・アサト(ブラジル出身の日系人ギタリスト。SNSを通じて、新世代のギターヒーローとして注目集めた)がYouTubeだけに投稿してたような時代。すごく雑多な感じだったと思います。

タグをつけたのも半分冗談みたいな、「ぶっちゃけ見られないだろうけど、一応つけるか」くらいのすごく軽い気持ちだったんです。でも、それによってバッと広がって、「こうやって世界に出ていくやり方もあるんだな」ってそのとき知りました。

かつてはリズム / ビートが主役だった「ネオソウル」だが、2010年代のリバイバル以降はギターの存在感が高まり、演奏動画がSNSを通じて拡散されるムーブメントへと発展。日本では星野源とのコラボでも知られるトム・ミッシュはその先駆け的な位置づけの一人

世界のオタクたちが注目? 「2.5次元的な感覚で見られている」

―自分の演奏動画がなぜ受けたのか、自己分析はしていますか?

Ichika:してますね。ぼくは大学で医学を専攻していて、ゴリゴリの理系だったので、もともと実験することが癖みたいになってるんですよ。「仮説・実験・結果・考察」というサイクルを回していくことが何をやるにも当たり前のルーティーンになっていて、自分の動画に関しても統計を出したりしています。

やっぱり一番は「なんだこのギタープレイ?」みたいな、音楽性と技術に注目してもらえたんだと思います。それプラス、iPhoneで雑に撮ったことで親近感が生まれて、時代に合ってたのかなとか、タイトルにインターネットミームを絡ませたことで、ギターファン以外のいままでに知ってもらえなかった層にリーチできたり、そういう要素もあったりして。

歴史あるギターブランドIbanezと、日本人アーティストとして初めてシグネチャー契約を結び、発売されたモデル「ICHI10」

Ichika:あとYouTubeに限った話でいうと、ぼくまったくしゃべらないんですよね。なので、基本的にはキャラクターとして成立しにくいはずなんです。普通YouTubeって、話しているのを聞いて、人となりがわかって、ファンになったりするじゃないですか? ぼくはそういう要素がないにもかかわらず、キャラクター化してる現状があって。

―なんだろう、2.5次元的な感覚なんですかね。

Ichika:そうそう。よくコメント欄で、「protagonist=主人公」という言葉が使われてるんですよ。「Ichika Nitoは主人公だ」みたいな、そういう捉え方をしている人たちが結構いるみたいで。没入感があるというか、「自分がこんなにギター上手かったらかっこいいよな」みたいな、そういう気持ちで見てくれてるのかなって。

―面白いですね。ジャズやメタルを背景とする高い音楽性や技術に惹かれているのはもちろん、主人公であるIchikaさんに自分を投影している。世界には日本のアニメやゲームのファンが多くて、音楽もそれに紐づいて聴かれている現状ともリンクする話だなと。

Ichika:そうだと思います。彼らのいう「主人公」って、小説や映画じゃなくて、やっぱりアニメやゲームの主人公だと思うんですよ。というのも、コメントしてくれるファンのなかにアニメアイコンの人がすごく多いんです。ぼくのYouTubeを見てくれてるのは9割が海外の人なんですけど、半分以上がオタクの人なんじゃないかなって。

―Ichikaさんの初期作のアートワークも、やはりアニメやゲーム的な世界観でしたよね。

Ichika『forn』を聴く(Spotifyを開く

Ichika『she waits patiently』を聴く(Spotifyを開く

Ichika『he never fades』を聴く(Spotifyを開く

Ichika:そういうイメージでした。ぼくはそもそも音楽をやっている目標が、「魂の琴線に触れる音楽をつくって、演奏する」ということなんです。じゃあ、それをするためにはどうすればいいのか、仮説を立てて、検証を繰り返しているのがいまなんですよね。

ただ、人にはいろんな感情があるなかで、複数の感情に対して雑多に音楽をつくっても、あまり成長しない。なので、まずは「せつない」とか「悲しい」という感情のベクトルに向かう音楽をつくるための技術を磨こうと、数年前に決めたんです。

―たしかに、Ichikaさんの音楽からはそのフィーリングが感じられます。

Ichika:とはいえ、自分が人生のなかで経験する「せつない」や「悲しい」は限られているから、人の話を聞いたり、物語で疑似体験をすることが大事だと思ったんです。そこで、当時音源をつくっているときにのめり込んでいたアニメやゲームの世界観をイメージして、アートワークをつくってもらいました。

「『かっこいいアジア人』のイメージをつくる一助となって、ヘイトをなくしていけたら」

―アニメやゲームの音楽もお好きですか?

Ichika:めちゃ好きですね。アニメでいうと、それこそジブリは海外でも人気ですけど、ぼくもほぼ全作見ているくらい好きです。久石譲さんと坂本龍一さんはぼくのなかで大きな存在ですね。

―Ichikaさんの音楽からはジャズやメタルだけじゃなくて、ゲーム音楽や映画音楽、ニューエイジとのリンクも感じていたので、納得です。

Ichika:ニューエイジは自分のなかでは意識してなかったですけど、わかる気はします。ただ、「影響」に関しては難しいというか、おふたりのことは大好きなんですけど、意図的に聴かないようにしていて。あまりに好き過ぎるから、聴くと自分のつくるものが引っ張られてしまうと思ったんですよね。だからどの曲も1回以上は聴かないようにしています(笑)。

―ゲームミュージックに関してはどうでしょう? オリンピックの開会式でも日本のゲームミュージックが使われていたように、やはり世界にもファンが多いわけですが。

Ichika:すごく好きですね。そもそもゲーム自体めちゃめちゃ好きだし、好きな作曲家もいっぱいいるんですけど……「アトリエシリーズ」というファンタジー系のロールプレイングゲームをつくっている、ガストという会社の作曲家陣はみなさんすごくいい曲をつくるなって。

クラムボンが担当した主題歌も収録されている『ライザのアトリエ2~失われた伝承と秘密の要請~オリジナルサウンドトラック』を聴く(Spotifyを開く

Ichika:毎日のようにいろんな音楽を聴いて、そのなかで自分がアッと思った音楽の要素を分解して、何がよかったのかを調べるんですけど、ピンと来るのはゲーム音楽が多かったりします。

―やっぱり研究者ですね。さきほどの「主人公」という話はすごく面白かったのですが、ほかに海外からのリアクションで印象的だったことはありますか?

Ichika:これは難しいですけど……やっぱり人種の問題を感じることはあって。「アジア人がこんなにギターが上手くて、英語圏の人間がこんなに反応してる。気にくわねえ」みたいなコメントもあったりするんですよね。

でも、それこそ「主人公」という像ができつつあるのなら、いま世界で活躍しているアジア人と同じように、自分も「日本人かっこいいじゃん、アジア人かっこいいじゃん」というイメージをつくる一助となって、アジアンヘイトをなくしていけたらなと思うようになりました。

―海外からも多くの人に聴かれるということは、当然複雑な問題に直面することにもなるわけですよね。

Ichika:ただ、自分が気にかけているのは、ファンの人には何も押しつけないし、逆にファンの人から何かを求められてもそれに応えるんじゃなくて、一定の距離を置くということで。

―それはなぜでしょう?

Ichika:「アーティスト」としての評価をあまり大きくしたくないんですよね。そこは意識的に制限しています。やっぱり、音楽や演奏そのものが正当に評価されてほしいので、フィルターはできるだけ薄くしたいんです。活動が大きくなって、いろんな人に聴いてもらえるようになると、当然コアなファンも増えるから、それを無下にはできないですけど、最低限の線引きというのは気にしています。

キャラクターが先行し過ぎて、「その人が好きだから聴く」みたいになっちゃうと、何のためにやっているのかわからなくなってしまう。さっきも言ったように、ぼくの目的は人気者になることではなく、魂の琴線に触れるような音楽をつくることで、下駄を履かされるのは嫌なんですよね。

カーディ・B、コダック・ブラック、マシン・ガン・ケリー、ホールジー……IchikaがかかわってきたUSの大物たち

―2020年は当初海外に拠点を移して活動する計画があったそうですね。

Ichika:ちょうど2020年の1月に『The NAMM Show』(世界最大規模の楽器見本市)のためにカリフォルニアに行って、それまでインターネットだけでやりとりしていたアーティストと一緒に作業をしたり、セッションをしたりもしたんですけど、やっぱり音楽という文化の在り方が日本と全然違うなって、肌に触れて実感したんです。

『The NAMM Show』ではCharとの共演も果たした

Ichika:向こうだとコミュニケーションの一環として家族で路上演奏をしていたり、生活の一部になっているけど、日本は音楽が嗜好品で、そもそものポジションが全然違う。だったら、向こうのほうがスピード感を持っていろんなことを得られると思ったんですけど……コロナが広がってしまって。

―向こうではどんな活動をする予定だったのでしょうか?

Ichika:そもそもInstagramでバッとファンが増え始めた頃は、自分の曲で生計を立てていたわけではなくて、海外アーティストの曲のレコーディングに参加していたんです。

LAのワーナーミュージックのA&R(宣伝、制作担当)のヘッドの方に声をかけていただいて。ラッパーのカーディ・Bとか、コダック・ブラックとか、ワーナーのアーティストの曲でギターを弾いていて、当時それがメインの仕事だったんですよね。なので、向こうに行ったらそういうことがもっとスムーズにできるなって。

―いきなりビッグネームが続いてびっくりしてます(笑)。

Ichika:参加はしてるけど、名前は出してない曲がいっぱいあるんです。最近だと同じくラッパーのマシン・ガン・ケリーもやったし、あとジョン・カニンガムというプロデューサーとは長いこと一緒にやっていて、シンガーソングライターのホールジーの曲とか、映画『ワイルド・スピード / ジェットブレイク』(2021年)の劇伴にも参加させてもらったり。

あと仕事とは別で、最近Dream Theaterのキーボーディスト、ジョーダン・ルーデスがめちゃめちゃ気に入ってくれて、ぼくの動画のカバーを始めて。ぼくがDream Theaterのカバーをするのはわかるけど、Dream Theaterがぼくのカバーをするっていうのは一体なんなんだって(笑)。

Ichika Nito VS Jordan Rudess from Dream Theater

―元メタルキッズとしては衝撃ですよね(笑)。

Ichika:逆にヒップホップとかR&Bは、ぼくはもともとそんなに聴いてなかったんですけど、作品に参加することが多くて。それはぼくの音楽のせつなさを気に入ってもらえて、なおかつトレンドにも合ったおかげなのかなと思っています。

英語でのコミュニケーションはつたないけど、自分とは関係ないと思っていたジャンルのアーティストが自分の音楽に親和性を感じてくれて、「おまえの音楽は最高だ」と言ってくれると、そこで共通言語が生まれて、相互理解ができた気がします。

―ただ、結果的にコロナの影響で海外に行くことはできなくなってしまった。そのことについてはどう感じていたのでしょうか?

Ichika:超楽観的なので、「それはそれでいっか」みたいな感じでしたね。日本は日本でご飯も美味しいし、いままでどおりオンラインでやればいいかなって。そもそもぼくはやりたいことが多過ぎて、寿命が足りないんですよ。だからひとつの計画がだめになっても、他にやることはたくさんある。

大学で医学の道に行った理由も、不老不死について研究したいと思ったからで、脳科学を専攻していました。ただ、世の中の天才たちがずっと不老不死について研究し続けて、それでも答えは出てないわけで、一大学生が答えを出せるわけないなって、そこはあきらめたんですけどね。

―ちなみに、アメリカに行かなかったことで始めたことのひとつとして、ハープがありますよね。

Ichika:音楽に興味を持ったきっかけが「マーリン」シリーズという、魔術師に成長していく少年を主人公にした海外の児童文学で、そのなかに竪琴が出てくるんですよ。その描写がすごく印象に残って、音楽っていいなと思ったのが最初なんです。

アメリカ行きがなくなって時間ができたときに、そういえばルーツの楽器をやってなかったと思って、始めてみたら面白くて。それこそアニメやゲームでも、昔からファンタジー世界の楽器といえばハープですしね。

佐藤千亜妃の最新作『KOE』に収録されている“愛が通り過ぎて”は、Ichikaが初めてハープを正式に録音した楽曲(Spotifyを開く

「日本のメジャーな音楽を聴いているリスナーに、Diosの音楽がどう刺さるか興味がある」

―今年の3月からはたなかさんとササノマリイさんとのDiosも始動しました。日本での活動をより本格化させたいという考えもあったのでしょうか?

Ichika:あまりそういうことでもないです。まず、ぼくは基本的にずっとひとりでやってきたので、メンバーと一緒に、コンスタントに活動するということをやってみたかったのと、2人とも本当に好きなミュージシャンなので、この3人でとにかく美しいものをつくりたいというのが原動力としてあります。なおかつ、その音楽がいまの日本のメジャーな音楽を聴いているリスナーにどう刺さるかに興味があるんですよね。

―これまで4曲が配信されていますが、手応えをどう感じていますか?

Ichika:これまで出した4曲はまだ試している段階というか、もともとメンバー3人とも個人で活動してきたアーティストなので、できることが多過ぎるんですよ。各々の選択肢が豊富にあって、それを掛け算したら出せるものが無限にある。まだ自分たちでもどれがいいのかがわかってないんです。

なので、まずは実際に行動して、その結果を考察して、フィードバックして、また仮説を立ててということを繰り返すしかないかなって。最初に出した“逃避行”と、一番最近出た“劇場”は全然違う曲調なんです。これは一回幅を広げて、自分たちにできることの全体図を見てみようっていう考え方ですね。

Dios“逃避行”を聴く(Spotifyを開く

Dios“劇場”を聴く(Spotifyを開く

―Diosの場合はあくまでターゲットを日本のリスナーと想定しているわけですか?

Ichika:そこは意識してます。日本語で歌っているのもそういうことですし。ぼくのYouTubeやInstagramをフル活用すれば、海外のリスナーも増えると思うんですけど、いまはあえて避けていて。

というのも、ミュージックビデオのコメント欄に海外の方のコメントが増えると、日本の人はコメントしづらいと感じるみたいなんです。ぼくらとしては、まず日本のリスナーに聴いてもらって、口コミで広めてほしいと思っているので、そういう動きが抑制されてしまうのは嫌だなって。

―なるほど。先に海外に名前が知れ渡ったIchikaさんならではの視点ですね。

Ichika:いずれタイミングが来たら、Diosとして海外にアプローチするのも面白いんじゃないかとは思います。でもいまはまだ3人の共通点を見つける、もしくは違う部分を認め合って、3人の親和性をより高めていく段階だと思っているんです。バンドとしての経験値が溜まってきたら、ようやく3人本来の実力が出せるんじゃないかと。

他の人と音楽をつくると、自分ですべてをコントロールできないぶん、偶然から素晴らしいものが生まれる機会もあります。ひとりでやっているとそういうことはなかったので、バンドの楽しさを感じています。

IchikaがSNSでの活動を通じて描く夢、「世界中のミュージシャンが切磋琢磨できる場所をつくりたい」

―「やりたいことがあり過ぎる」ということでしたが、先日『クラシックTV』(NHK)に出演した際、「SNSを通じて知り合った世界の音楽家とオーケストラをつくりたい」というお話をされていましたよね。

Ichika:あのときは言葉がわからなくて「オーケストラ」と言ったんですけど、たぶん「学校」に近いですね。ぼくは近くに同世代のライバル的な存在が少なかったので、切磋琢磨できるような、音楽に夢中な人間の集まれる場所が欲しいと思ったんです。いま実際メンバーを募っていますが、世界中から人が集まるコミュニティーみたいな場所になればなと思っています。

『クラシックTV』出演時にIchikaが「オーケストラ」に誘ったことを明かしていた「かてぃん」こと角野隼斗の『HAYATOSM』(Spotifyを開く

Ichika:いまはSNSとかで有名にならないと、ミュージシャンとしてなかなか食っていけないという現状があって。めちゃめちゃ才能あるのに、家庭環境とか、金銭的な問題で音楽が続けられない人がいて、それを何とかできないかと思ったんです。

これには長い時間が必要ですけど、そういう人たちに金銭的な援助をすることで、少しずつミュージシャンとしての仕事ができるようになって、最終的に独り立ちできるような、そういう団体、学校、コミュニティーみたいなかたちになればいいなって。

―やはり、SNSという場自体がIchikaさんの大きなインスピレーション源になっているわけですね。

Ichika:いまの時代は本当に自由ですよね。思ったことが実際にできちゃう。そういう意味では、すごくいい時代だと思っていて。

―もちろん、その裏側には相当な努力もあるでしょうけど。

Ichika:もちろん、それはそうです。たまたまで乗っかってしまうと、地力がないわけだから、つぶされちゃうんですよね。どこかのポジションを得られたとしても、そこに心身が追いついていないと、逆に寿命を縮めてしまいかねない。だからこそ自分の実力以上の聴かれ方をしないように、コントロールしてもいます。

―少し前に「1stアルバムがほぼできあがっている」というツイートもありましたが、それに関してはいかがですか?

Ichika:やはりアルバムは最初の集大成になると思うので、タイミングを模索しつつ、気になる部分に手を入れつつ進めています。まずはしっかり技術を磨くことを優先して、少しずつ自分の目標に向けて進んで行きたいと思います。

イベント情報
「The Session Eclipse」

日時:2021年10月15日(金)

①12:30開場 / 13:00開演
②18:30開場 / 19:00開演
会場:渋谷ストリームホール

プロフィール
Ichika (いちか)

イギリスのギター雑誌『Total Guitar』の読者が選ぶ「史上最高のギタリスト100選」で「現在最高のギタリスト」として8位にランクイン。2018年からはゲスの極み乙女。の川谷絵音らとインストバンド「ichikoro」でも活動している。Dream Theaterのジョン・ペトルーシなど著名なギタリストはもちろん、ゼッドやマーティン・ギャリックス、ホールジーなどの楽曲をプロデュースするジョン・カニンガムといった別ジャンルの世界的アーティストたちからも厚い支持を受けている。Ichikaの研ぎ澄まされた感性と唯一無二のギタースタイル、トーン、テクニックには、海外からも楽曲提供や楽曲参加のラブコールが絶えない。去年から始めたYouTubeは現在登録者数が169万人越えと、ワールドワイドな注目の高さがうかがえる、いま日本で際立っている知っておくべきギタリスト。



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「Kompass」は、ネットメディア黎明期よりカルチャー情報を紹介してきたCINRA.NETと、音楽ストリーミングサービスの代表格Spotifyが共同で立ち上げた音楽ガイドマガジンです。ストリーミングサービスの登場によって、膨大な音楽ライブラリにアクセスできるようになった現代。音楽の大海原に漕ぎだす音楽ファンが、音楽を主体的に楽しみ、人生の1曲に出会うガイドになるようなメディアを目指し、リスニング体験を交えながら音楽の面白さを紹介しています。

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