亀田誠治が語る、松本隆トリビュートという50年間のJ-POP大全

亀田誠治が語る、松本隆トリビュートという50年間のJ-POP大全

2021/07/20
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:丹野雄二 編集:タナカヒロシ、CINRA.NET編集部

このロッカバラードをGLIM SPANKYに置き換えたら、すごいケミストリーが生まれると思った“スローなブギにしてくれ(I want you)”

1981年公開の映画『スローなブギにしてくれ』の主題歌としてヒット、その後もCMソングに用いられるなど世代を超えて愛される南佳孝の“スローなブギにしてくれ(I want you)”。ロッカバラードの原曲に、GLIM SPANKYのヴィンテージなロックサウンド、そして松尾レミのハスキーな歌声がマッチしている。

亀田:GLIM SPANKYはデビュー前から知っているんですね。ボーカルの松尾レミちゃんは「いつの時代に生まれたんだ?」と感じるくらい1960年代の音楽をたくさん聴いてきた人で、まずはそういう彼女の音楽のバックグラウンドへのリスペクトがありました。数年前にGLIM SPANKYと斉藤和義くんと一緒に、はっぴいえんどの“はいからはくち”をライブでカバーしたことがあるんですよ。そのときにも松尾レミちゃんのあの時代をすべて背負って音楽に向き合ってるようなところに感動していて。

だから、今回のアルバムにも、あの時代の音楽を知り尽くしているGLIM SPANKYをぜひとも呼びたいなと思ってたんです。そこからどんな曲を提案しようかと考えた。今回はとにかく「J-POP大全」をつくろう、昭和から令和に至るまでの名曲と大ヒット曲しか入れないと決めているなかで、この南佳孝さんの“スローなブギにしてくれ”が、松本隆さんの歌詞だということに後から気づいた。これはやるしかないと思いました。このロッカバラードの感じをGLIM SPANKYのサウンド、そして松尾レミちゃんのボーカルに置き換えたらすごいケミストリーが生まれるだろうと思いました。

GLIM SPANKY
GLIM SPANKY

オリジナル曲では1980年代的なサウンドの打ち込みのビートが導入されているこの曲だが、今回のトリビュートではアナログなバンドサウンドにこだわってつくられた。

亀田:この楽曲をGLIM SPANKYでやるにあたっては、バンドサウンドでやろうと思いました。レコーディングも一発録りです。ダビングもしてません。スタジオにぼくとカースケ(河村“カースケ”智康)と、ピアノの皆川(真人)くんと、GLIM SPANKYのギターの亀本(寛貴)くん、そして松尾レミちゃんと一緒に「せーの!」で録りました。バンドサウンドにするにあたってもレミちゃんから「亀田さん、これさ、“Oh! Darling”だよ」って一言があって。The Beatlesの“Oh! Darling”を聴いていただけると、なるほど空気は同じだということを感じていただけるのではないかと思います。

GLIM SPANKY“スローなブギにしてくれ(I want you)”を聴く(Spotifyを開く

スローなブギにしてくれ(I want you) / GLIM SPANKY
作曲:南佳孝(オリジナルアーティスト:南佳孝 / 1981年)

Produced & Arranged by 亀田誠治
Recording & Mix Engineer:南石聡巳
Assistant Engineer:澁谷駿介(prime sound studio form)、豊田泰孝(誠屋)
Instrumental Technician:飯室”KAPPA”克己
Recording at prime sound studio form
Mixing at duskline recording studio
Vocal:松尾レミ

Guitar:亀本寛貴
Drums:河村“カースケ”智康
Bass:亀田誠治
Piano:皆川真人

三浦大知の歌だけでグルーヴをつくった “キャンディ”

1977年、“てぃーんず ぶるーす”“キャンディ”“シャドー・ボクサー”という3か月連続シングルでデビューした原田真二。エルトン・ジョンやポール・マッカートニーなど、当時の洋楽ポップスの素養をバックグラウンドに登場した彼の初期の代表曲を、今回のトリビュートでは三浦大知がカバーしている。

亀田:“キャンディ”を選曲してくれたのは三浦大知くんのほうなんです。三浦大知くんに参加してもらいたいというのは最初から思っていて。大知くんにどの曲をやりたいかと聞いたら、この“キャンディ”が上がってきた。子供のときに親御さんと一緒に聴いていたそうなんです。三浦大知くんは、みなさんご存知のとおり、Folder5というグループの出身で。子どものときからプロフェッショナルだった彼が、小さいときに聴いていたこの曲をこのアルバムで歌ってくれるってことは、すごく意味があることだと思ったんですね。

三浦大知
三浦大知

ダンサブルな楽曲を得意にしている三浦大知だが、あえてこの曲では音数を抑えたシンプルなアレンジが貫かれている。

亀田:三浦大知くんの歌を聴いて、すごく歌のなかにグルーヴがあると感じていたんです。今回はドラムやベースでビート感を出すんじゃなくて、歌だけでグルーヴをつくろうと思った。というのも、例えばSpotifyで「グローバルTOP50」を聴いていただくとわかると思うんですけど、最近のヒット曲って音数が少ないんです。昔は派手につくられてきた洋楽のサウンドが、すごくシンプルになってきている。ジャスティン・ビーバーもアリアナ・グランデもそうだし、ぼくもそういうサウンドがすごく好きで。

だから、この曲に関してはドラムはなくていい、と。多少アンビエント音は入ってるんですけど、ピアノ一本でいいやって思った。そういうダンスミュージックの最新のかたちをこの曲で届けてみたいと考えて、今回のサウンドアプローチをしました。

三浦大知“キャンディ”を聴く(Spotifyを開く

キャンディ / 三浦大知
作曲:原田真二(オリジナルアーティスト:原田真二 / 1977年リリース)

Produced & Arranged by 亀田誠治
Recording & Mix Engineer:牧野“Q”英司(Q OFFICE Co.,Ltd)
Assistant Engineer:藤倉裕美
Recording & Mixing at atelier Q

Vocal:三浦大知
Piano:皆川真人
Manipulator:豊田泰孝(誠屋)

亀田誠治

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イベント情報

『松本隆トリビュートを2倍楽しむプレイリスト』

松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム『風街に連れてって!』を、制作総指揮をつとめた亀田誠治が全曲解説!(インタビュアー:柴那典)

松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム
『風街に連れてって!』

初回限定生産盤(CD+LP+豪華特典本)

2021年7月14日(水)発売
価格:11,000円(税込)
COZP-1747-8

1. 夏色のおもいで / 吉岡聖恵
2. 君は天然色 / 川崎鷹也
3. SWEET MEMORIES / 幾田りら
4. SEPTEMBER / 宮本浩次
5. Woman“Wの悲劇”より / 池田エライザ
6. セクシャルバイオレットNo.1 / B'z
7. スローなブギにしてくれ(I want you) / GLIM SPANKY
8. キャンディ / 三浦大知
9. 風の谷のナウシカ / Daoko
10. ルビーの指環 / 横山剣(クレイジーケンバンド)
11. 風をあつめて / MAYU・manaka・アサヒ(Little Glee Monster)

松本隆作詞活動50周年トリビュートアルバム
『風街に連れてって!』

通常盤(CD)

2021年7月14日(水)発売
価格:3,300円(税込)
COCP-41453

プロフィール

亀田誠治(かめだ せいじ)
亀田誠治(かめだ せいじ)

1964年生まれ。音楽プロデューサー・編曲家として数多くのヒット曲を生み出し、ベーシストとしても様々なアーティストのレコーディングやライブに参加。2004年には椎名林檎らと東京事変を結成。2005年からはBank Bandのベーシストとして『ap bank fes』に参加。2007年および2015年には日本レコード大賞で編曲賞、2021年には映画『糸』で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。近年はJ-POPの魅力を解説するNHK Eテレの音楽教養番組『亀田音楽専門学校』シリーズへの出演や、親子孫3世代がジャンルを超えて音楽を体験できるフリーイベント『日比谷音楽祭』の実行委員長を務めるなど、さまざまなかたちで音楽の魅力を発信している。

柴那典(しば とものり)

1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立。雑誌、WEB、モバイルなど各方面にて編集とライティングを担当し、音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手掛ける。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)がある。

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