girl in redの綴る言葉。「Z世代のクィアアイコン」の詩的感性

girl in redの綴る言葉。「Z世代のクィアアイコン」の詩的感性

テキスト
伏見瞬
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)
2021/06/28
  • 268
  • 0

ノルウェー出身、1999年生まれのソロアーティスト。ビリー・アイリッシュの兄FINNEASとの協働も話題

1stアルバム『if i could make it go quiet』を4月に発表。リードトラックの“Serotonin”ではビリー・アイリッシュの兄としても知られるFINNEASを共同プロデューサーに迎え、ビートミュージックとインディーポップの鮮やかな融合を示したgirl in red。ノルウェー出身、1999年生まれのマリー・ウルヴェンによるプロジェクトである。オリヴィア・ロドリゴやClairoといった同世代のミュージシャンが台頭するなか、girl in redの特性は、なによりその表現の凝縮力にある。

girl in red
girl in red

ウルヴェンの表現の核へ向かう前に、まずはサウンドの特徴を確かめよう。2016年から断続的に発表されてきたgirl in redの楽曲には、インディミュージックの美意識が表れていた。

2019年発表の“i need to be alone.”や“watch you sleep.”を聴いてみればわかる。薄い絹地のようにリバーブのかかったギター、平熱の凜とした声、ミニマムなコード進行と瑞々しい透過性のメロディー。初期のBelle and Sebastianや、2010年代初頭のCaptured Tracks所属のバンド(Wild Nothing、Beach Fossils、Minksなど)の系譜に連なるスタイルが、ウルヴェンの作る音楽の特徴だった。

2019年にリリースされたgirl in redのEP『chapter 2』。“i need to be alone.”や“watch you sleep.”を収録(Spotifyを開く

ビートミュージックに接近した1stアルバムで光る、同郷マティアス・テレス(Young Dreams)の手腕

新作『if i could make it go quiet』ではシンプルなバンドサウンドから離れ、プログラミングされたリズムやエフェクトが特徴的な、ビートミュージックの形式に接近している。

ネームバリューのせいでFINNEASの参加ばかりが注目されるが、実際には“Serotonin”の一曲にしか関わっておらず、アルバム全体の共同プロデューサーを務めたのはマティアス・テレス。ウルヴェンと同じくノルウェー出身で、Young Dreamsというバンドのメンバーとしても活動している。

マティアス・テレスの1stアルバム『Tamias Mellez』(2007年)を聴く(Spotifyを開く

Young Dreamsの2ndアルバム『Waves 2 You』(2018年)を聴く(Spotifyを開く

カエターノ・ヴェローゾやミルトン・ナシメントといったブラジルのアーティストの愛好者でもあるテレスは、ブラジル音楽とThe Beach Boysを混ぜながら、チルウェイブやオルタナティブR&Bなどの2010年代的なスタイルに親近する音像をYoung Dreamsで示してきた(彼らに似ているバンドを挙げるとするならTame Impalaだ)。異なるジャンルを自然に融合させるその手腕が、girl in redの作品でも発揮されている。

ノイジーなトラップ、下降進行のピアノバラッド、カントリー風味のEDM、弦楽器によるアンビエントといった様々なポップソングのバリエーションが一堂に会する中で、11曲のトータルタイムは約33分。統一感を持って、コンパクトにまとめられている。

girl in red『if i could make it go quiet』(2021年)を聴く(Spotifyを開く

Page 1
次へ

リリース情報

girl in red『if i could make it go quiet』
girl in red
『if i could make it go quiet』

2021年4月30日(金)配信

1. Serotonin
2. Did You Come?
3. Body And Mind
4. hornylovesickmess
5. midnight love
6. You Stupid Bitch
7. Rue
8. Apartment 402
9. .
10. I’ll Call You Mine
11. it would feel like this

プロフィール

girl in red(がーる いん れっど)

ノルウェー出身22歳のSSW、Marie Ulven(マリー・ウルヴェン)のソロプロジェクト、girl in red(ガール・イン・レッド)。自身のセクシュアリティのカミングアウトをともなったシングル「i wanna be your girlfriend」(2017年リリース)は、The New York Timesの年間ベスト楽曲トップ10に選出され、現在爆発的な成長を見せているクィア・インディーポップの市場において支持を集めている。注目の新人リストであるBBC Sound of 2021にもデビューを前にした絶好のタイミングで選出され、4月にリリースする待望のファーストアルバム『if i could make it quiet』でさらなるブレイクが確約されている。

Category カテゴリー

Latest Articles 最新の記事

What's "Kompass" ? コンパスとは

「Kompass」は、ネットメディア黎明期よりカルチャー情報を紹介してきたCINRA.NETと、音楽ストリーミングサービスの代表格Spotifyが共同で立ち上げた音楽ガイドマガジンです。ストリーミングサービスの登場によって、膨大な音楽ライブラリにアクセスできるようになった現代。音楽の大海原に漕ぎだす音楽ファンが、音楽を主体的に楽しみ、人生の1曲に出会うガイドになるようなメディアを目指し、リスニング体験を交えながら音楽の面白さを紹介しています。