NOT WONKの精神。集団でも記号でもない、1人のあなたにむけて

NOT WONKの精神。集団でも記号でもない、1人のあなたにむけて

2021/03/24
インタビュー・テキスト
矢島大地
撮影:佐藤祐紀 編集:柏井万作(CINRA.NET編集部)

正解を示せるかどうかじゃなく、目指す理想に向かって考えること。それが僕の思うパンクですね。

―音楽的にも規模的にも広げたなら、精神性の部分で原点に戻ろうということですよね。そこで伺いたいのは、加藤さんの思うパンクとはどういうものなんですか。

加藤:ひと言では表せないものですけど……たとえば「これは間違ってる」「これはおかしい」と思うことがあったとして、それに唾を吐きかけるだけがパンクではないと思っていて。もっと言えば、唾を吐きかけたって根本的な解決にはならないんですよ。いろんな価値観が可視化されている今の時代は特にそうですけど、何が正解なのかは誰にもわからないじゃないですか。だとすれば、大事なのは悪を決めつけて潰すことじゃなくて、「どう行動すれば自分の理想を叶えられるのか」って考え続けること自体なんですよ。正解を示せるかどうかじゃなく、目指す理想に向かって考えること。こちらが正しいと示すことじゃなく、考えた上で行動すること。それが僕の思うパンクですね。

加藤修平

―行動した結果として失敗しても、それを責めるのではなく、次に繋げていく姿勢とも言えますか。

加藤:何にせよ、1回で全部うまくいくことはないですからね。大事なのは、失敗にも反省にも嘘をついちゃいけないってことだと思うんですよ。人は、結果に対して辻褄を合わせることもできちゃうじゃないですか。「もとからこういうつもりだったんだよね」って。でも、それが一番NGなことなんですよ。想い通りにいかなかった時に、ちゃんと自分を省みることができるか。その繰り返しこそが次に繋がる行為だと思うんです。

だから僕が考えてきたパンクっていうのは対外的なものじゃなく、自分ひとりの中にあるものなんです。トライすることも失敗を認めることも労力を要するんですけど。だからこそ、それぞれの失敗をただ責めることよりも、話し合ったり対話したりっていうことが大事なんですよね。

加藤修平

僕ら以降の世代では、マッチョイズムとロックの関係性を引き継がないほうがいい。もう僕らの世代で終わらせたほうがいいものがたくさんあるなって思う。

―今話していただいた内容はそのまま『your name』というイベントの説明であり、『dimen』の説明にもなっていると思って。2019年に苫小牧の『your name』に伺って感じたことですが、加藤さんの手刷りのインビテーションを手にして名前を呼んでもらって、その場にいる人の顔と名前をお互いに確認していく時間は、一人ひとりの人生の集合体としてこの場所が成立していると実感する時間でもあり、自分の存在を確認する場所にもなっていると感じて。NOT WONKの活動として重要なイベントであると同時に、人の存在が記号化されてひと塊にされていく世の中へのカウンター意識もあったんじゃないかなと思ったんですが、そこはどうなんでしょうか。

加藤:ああ……社会の構造によって人がひと塊にされてきたっていうのは、その通りだと思ってて。コロナによって「クラスター」っていう言葉が叫ばれるようになる前から、アーティストの熱心なファン層をクラスターって呼ぶこともあったじゃないですか。でもそれって、悪い例で言えば飛行機事故みたいなものだと思っていて。飛行機が墜落したら「数百人が死にました」っていう文言だけで片付けられるけど、その一人ひとりにストーリーがあって、生活があって、名前があるんですよ。言葉にすると当たり前ですけど、一人ひとりが生きているんだっていう意識は大事にしてきて。その結果として、今の社会に対する視点も多分に含まれたイベントになったんだと思います。

たとえば「お天道様が見てるよ」っていう話があるじゃないですか。人が見てなくてもお天道様が見ているから悪いことはできないよっていう話。僕はその感覚が好きなんです。で、『your name』はまさにそれだったと思うんですよ。自分がお天道様になったっていう話じゃなく、名前を共有し合った一人ひとりが作用し合う環境だったというか。むしろ、僕はリーダーじゃなくハブで在りたいと考えていたのが『your name』なんですよ。

加藤修平

―「お天道様が見ているよ」っていう言葉は「悪いことをしちゃいけないよ」っていうニュアンスで使われることが多いですけど、どんな時でもあなたが生きている姿を見ている人がいるよっていう意味合いもありますよね。で、加藤さんはそこに自覚的だった気がするんですけど。

加藤:そうなんですよね。一人ひとりの存在が見落とされていく風潮も、コロナ禍になって叫ばれるようになったアイデンティティの話に関しても、けして今始まったことじゃなくて。今は名前っていうものが管理に使われるだけになっていて、それは悪い意味で人を孤独にする構造だと思うんですよ。それこそ人間の記号化ですよね。でも本来、名前は個人の存在のことだから。だから『your name』での僕は、リーダーになるんじゃなく、一人ひとりのハブになりたいと思っていたんですよ。その結果として、一人ひとりの自治とコミュニケーションが生まれる日になって。そういう場所を用意できたのが嬉しかったし、ハブっていう在り方こそが僕のやりたいことなんだと実感しましたね。

加藤修平

―野暮を承知で聞きますが、リーダーではなくハブでありたいのはどうしてですか。

加藤:まあ、人間の歴史上で「リーダー」と呼ばれる人にロクなヤツがいたことないですからねえ。

―そうですね。

加藤:人が集まることでリーダーが生まれる集権的な組織って、排他を生みやすいじゃないですか。で、僕も気を抜いた瞬間にそうなってしまう可能性があるんですよ。イベントやライブを行うのは、少なからず賛同者が集まるっていうことですよね。それは嬉しいことである反面、僕が神輿に乗っかった瞬間に「一人ひとり」ではなく集団になってしまうんです。そうなると、僕が大事にしてきたこととは真逆になるんですよ。僕も不完全な人間だから間違えることがあるし、間違えた時に指摘してもらえる関係を人と作りたい。誰かが間違いを犯した時に指摘できない集団は盲目的になっていくし、考えることを奪われていくだけだから。で、パンク自体が権威やリーダーっていう発想と真逆のもので、個々で社会を自治していく精神性のことなんですよね。

―まさに。

加藤:でもその一方で、パンクやロックは権威になりやすい音楽だとも思っていて。もし『your name』がソフィスティケイトされるようなことがあれば、あそこに集まった300人が新たな権威を振りかざして、自分の正義を他人に押し付けることになりかねないわけです。それはかなりマッチョな構造だし、パンクとかロックがマッチョイズムとくっつきやすい理由はそこだと思うんですよ。

―新たなカウンターが生まれて人を扇動した瞬間、それが新しい権威にすり替わってしまう可能性がある。

加藤:そうそう。それは上の世代を見ても思うことで。でも僕ら以降の世代では、マッチョイズムとロックの関係性を引き継がないほうがいい。それだけに限らず、もう僕らの世代で終わらせたほうがいいものがたくさんあるなって思うんですよね。マッチョイズムの話はまさにそうですけど、ジェンダーに関する問題についても最近はより一層考えますし。

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リリース情報

NOT WONK『dimen』
NOT WONK
『dimen』(CD+DVD)

2021年1月27日(水)発売
価格:3,500円(税込)
CTCR-96007B

[CD]
1. spilit in the sun
2. in our time
3. slow burning
4. shell
5. get off the car
6. 200530
7. dimensions
8. interlude
9. the place where nothing’s ever born
10. your name

[DVD]
1. Boycott
2. I Won't Cry
3. Shattered
4. Down the Valley
5. slow burning
6. your name

イベント情報

『LIVE! : dimen_210502_bipolar_dup.wtf』

2021年5月2日(日)
【第一部】14:30開場 / 15:15開演
【第二部】18:00開場 / 18:45開演
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
料金:自由席4,000円(税込 / ドリンク代・送料込み) / 当日券未定

プロフィール

NOT WONK(のっと うぉんく)

2010年に結成した、苫小牧を拠点に活動する3ピース。2015年の1st AL『Laughing Nerds And A Wallflower』をリリース、タワーレコメンにピックアップされる。2017年にはRISING SUN ROCK FESTIVALにも出演(その後、18、19年と3年連続での出演を果たす)。2018年にはFUJI ROCK FESTIVAL ルーキー・ア・ゴーゴー、りんご音楽祭、全感覚祭2018に出演。同年11月には札幌ベッシー・ホールでのワンマン、翌年3月東京での初ワンマンを成功させるなど、その卓越したライブパフォーマンスで着実なステップアップを果たす。今年、コロナ禍においても、8月には渋谷WWWXにてワンマンライブ&配信イベントを敢行。9月には、Levi’s「TYPE-1 JEANS」キャンペーン映像の音楽をVo.加藤(SADFRANK)が担当する。さらに、10月27日にKT Zepp Yokohamaで開催された収録ライブに『ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2020 酔杯2 ~The Song of Apple ~』にゲストとして抜擢されるなど、スタイルを崩さずしっかりとした実績を積んでいる。

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