Nulbarich×Vaundy対談 曲作りに秘められた頭脳戦

Nulbarich×Vaundy対談 曲作りに秘められた頭脳戦

インタビュー・テキスト
天野史彬
編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

足し算はみんなでできるけど、引き算は1人でしかできない。音のデザイン

―Vaundyさんの『strobo』と、去年、Nulbarichがリリースした『2ND GALAXY』は、フルアルバムとミニアルバムという名義の違いはあれど、作品としての構造がどこか似ているような気がして。様々な曲調の楽曲を、決して長くない時間内に並べながら、アルバム作品としてのトータリティも感じさせる。こう見ると、おふたりとも、ストリーミングが主流になった今の時代の音楽の聴かれ方に対して、非常にフレキシブルに対応しているように思えるんです。

Vaundy:今はもう、プレイリスト文化だと思うんですよ。今、みんながラッパーのような感じだと思うんです。

JQ:昔のDJのミックステープを聴くように、みんな音楽を聴いているよね。

Nulbarich『2ND GALAXY』を聴く(Spotifyを開く

Vaundy:そうですよね。プレイリストって、サンプリングのようなものだから。みんなが自分の好きな音楽を切り取って、張り付けて、自分の表現にしている。僕が『strobo』を作るうえで考えていたのは、これは「Vaundyのプレイリストになる」ということだったんです。だからシングル曲を並べていくようなつもりがあったんですけど、それを前提にしたうえで、やっぱり作品としての統一感も必要だと思ったので、“Audio 001”と“Audio 002”というインスト曲を入れて。僕にとっては、あの2曲のインストが『strobo』の曲であり、『strobo』の世界観なんです。

Vaundyのライブ写真 / 撮影:Takeshi Yao
Vaundyのライブ写真 / 撮影:Takeshi Yao

Vaundy『strobo』を聴く(Spotifyを開く

―そこは、プレイリスト的な受領のされ方も受け入れつつ、アルバムとしての作品性も手放さない、バランスの取れた作品の生み出し方ですよね。

JQ:多様性って、どちらかに偏らないですからね。プレイリストの文化が盛んになったときには、それに対するアンチテーゼも出てきたし、その逆も然りだし。最近は、アルバムとしてしっかりパッケージングした作品もまた増えてきていると思うんですよ。もちろん、いろんなプレイリストに断片的に切り取られることも念頭においているけど、そこで「この曲に愛が生まれたら、ここに帰ってきてね」とちゃんと言えるような、帰るべき家としてアルバムが存在しているっていう矢印も、数年前よりも明確に見えてきていると思う。

―Nulbarichさんは2019年には『Early Noise Special』に出演されていましたよね。一方でVaundyさんは今年、Spotifyの「Early Noise」に選出されていました。

Vaundy:「俺でいいのか?」という感じでしたね(笑)。ありがたかったです。いま作っている曲たちは『strobo』の曲たちとはまったく違うタイプのものなので、期待してもらっているからには、面白いものを返せるように頑張ろうって思っています。

『Early Noise Japan』を聴く(Spotifyを開く

―Vaundyさんは11月26日の『Spotify presents TOKYO SUPER HITS LIVE 2020』への出演も決まっていますね。

JQ:僕らも、日本でSpotifyがローンチされた最初の頃に、1曲すぐに配信させてもらったりしましたから。Spotifyは、自由度が高いと思うんですよ。

Vaundy:開いたときに、音楽が出ているのがいいですよね。人によって画面が違うし。

JQ:どこか、SNSっぽい掴み方なんだよね。視覚的にも見やすいし、友達と情報共有しやすい。Spotifyはアメリカでめちゃくちゃユーザー数が多いけど、あの形式ばっていない感じが好まれてるんだと思う(笑)。

―Nulbarichとしては、この先、今回のようなコラボは続けていく予定なんですか?

JQ:今回の“ASH“は、あくまで奇跡的にできた曲なので、まったく参考にならないんです(笑)。世界的にもコライトは主流だし、そういう現場もたくさん見てきたけど、「いいね」のやり合いになってしまう危険性があるんですよ。テンションで「これどう?」「いいね!」っていうコミュニケーションをやっていくだけで、作業は速いんだけど、実は、自分で考える時間がないだけっていう側面もあって研ぎ澄まされているわけではない。

Nulbarichのライブ写真 / 撮影:岸田 哲平
Nulbarichのライブ写真 / 撮影:岸田 哲平

Vaundy:「引き算」ができなくなりますよね。僕は絵を描いたりデザインをするんですけど、デザインって引き算をして最後に残ったもの、つまり最小形態が一番綺麗と言われるんですよね。僕の音楽の作り方ってそれなんです。「ここに音入れようぜ」って、足す作業は誰にでもできる。でも、引く作業ってひとりじゃないと難しい。ただ、今回はふたりで引き合ってできた曲だから、シンプルだし、それぞれのヴァースによさがあるし、すごく絶妙な形になったと思うんですよね。

JQ:そうだね。だから、この先、演奏者やシンガー、ラッパーの方を呼んでNulbarichの曲を一緒にやってもらう、みたいなことはあるかもしれないけど、今後、今回のようにプロデューサー視点を持つ者同士でできるかと言われると、難しい気がするんですよ。

Vaundy:僕は、こんなこと、もう二度とできないような気がします(笑)。

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リリース情報

Nulbarich
『ASH feat. Vaundy』

2020年10月28日(水)配信

1. ASH feat. Vaundy
2. ASH feat. Vaundy(n-buna from ヨルシカ Remix)

イベント情報

『Nulbarich Live Streaming 2020 (null)』

2020年12月22日(火)
開場19:30 / 開演20:00

出演:
Nulbarich
Vaundy

料金:3,500円(税込)
視聴券販売期間:11月21日(土)12:00 〜 12月28日(月)19:00

サービス情報

Spotify

・無料プラン
6000万を超える楽曲と40億以上のプレイリストすべてにアクセス・フル尺再生できます

・プレミアムプラン(月額¥980 / 学割プランは最大50%オフ)
3ヶ月間無料キャンペーン中

イベント情報

『Spotify presents Tokyo Super Hits Live 2020』

2020年11月26日(木)20:00からStreaming+で生配信

出演:

Perfume
End of the World
[Alexandros]
ビッケブランカ
Vaundy
マカロニえんぴつ

料金:3,500円

プロフィール

Nulbarich
Nulbarich(なるばりっち)

シンガーソングライターのJQがトータルプロデュースするバンド。ソウル、ファンク、アシッドジャズなどをベースにした音楽性が特徴で、メンバーは固定されず、そのときどきに応じてさまざまな演奏形態に変化する。2016年6月にタワーレコードおよびライブ会場限定の1stシングル「Hometown」、10月には1stフルアルバム「Guess Who?」をリリース。その後は積極的なライブ活動を行いながら、「H.O.T」「Blank Envelope」の2枚のアルバムを発表した。2019年11月にミニアルバム「2ND GALAXY」をリリース。12月にはバンド史上最大キャパとなる埼玉・さいたまスーパーアリーナでワンマンライブ「Nulbarich ONE MAN LIVE -A STORY-」を開催する。2020年10月にはVaundyとのコラボ曲「ASH feat. Vaundy」を配信リリース。カップリングのリミックスは、ヨルシカのn-bunaが手がけた。

Vaundy
Vaundy(ばうんでぃー)

作詞作曲からアレンジまでを自身で担当し、アートワークのデザインや映像もセルフプロデュースする20歳のマルチアーティスト。2019年秋頃からYouTubeに楽曲を投稿し始め、「東京フラッシュ」「不可幸力」のYouTubeでの再生回数が1500万回を突破するなどSNSを中心に話題を集める。2020年5月に、Spotify Premium のテレビCMソング「不可幸力」やFODオリジナルドラマ「東京ラブストーリー」の主題歌「灯火」などを収めた1stアルバム「strobo」を発表。10月には東京・Zepp Haneda(TOKYO)にて自身2度目となるワンマンライブを開催した。そのほかラウヴのグローバルリミックスアルバム「~how I'm feeling~(the extras)」に参加するなど、日本のみならず海外に向けての活動も積極的に行っている。11月3日には初のアナログ盤「strobo+」をリリース。

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