BLACKPINK『THE ALBUM』を紐解く。軽やかさと貫かれた力強さ

BLACKPINK『THE ALBUM』を紐解く。軽やかさと貫かれた力強さ

テキスト
山本大地
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)
2020/10/30
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「BLACKPINKらしい」サウンドの立役者。Teddyらお馴染みのプロデューサーたちが全面的に参加

実際に曲を聴いてみても、トミーとスティーブンが手掛けた “Ice Cream(feat. Selena Gomez)”と“Bet You Wanna(feat. Cardi B)”は、前者は2つのコードをひたすらループさせる構成、後者もほぼ全編一定のライトでパーカッシブなビートが支配している。そのシンプルで軽やかな作りは、アメリカのラジオ局のプレイリストにも自然とフィットしそうだ。ただアルバム全体では、そうしたアメリカのメインストリームポップらしさよりも、今までのBLACKPINKの楽曲を貫いていた彼女たちらしいサウンドの存在感が支配的に思えた。

そう感じさせた要因は、前述のソングライターたちが関わった曲も含め収録曲8曲全てに関わる、Teddy、24、R.TeeといったYGエンタテインメントの「The Black Label」所属ソングライターたちの存在にある。彼らはこれまでもほぼ全てのBLACKPINKの楽曲のソングライティングに携わってきた、BLACKPINKのサウンドに欠かせない存在だ。決まったソングライターではなく、その時々で異なるソングライターと共作したり、世界各地の作曲家たちがコライトした楽曲を起用するグループも多いなか、BLACKPINKはデビュー以来、とくにプロデューサーのTeddyと密接に協力して作品を作り上げてきた。アメリカのメインストリームポップのソングライターの力を借りながらも、全体的に音に統一感が感じられるのはやはり同事務所のプロデューサーが全編にわたって関わっているからだろう。

BLACKPINK“How You Like That”を聴く(Spotifyを開く

彼らがメインとなって手掛けた曲にはよりBLACKPINKらしさが体現されている。まず“How You Like That”“Pretty Savage”“Crazy Over You”の3曲は特に“DDU-DU DDU-DU”以降の近年のシングル曲のスタイルに近い。具体的には、サビ前からのビートのビルドアップとドロップ、サビではメロディを歌わずにキメのフレーズをリズムに乗せ、印象的なシンセのメロを際立たせる点などEDMらしい曲展開、重厚なベース音に激しいハイハットやスネアなどアメリカの現行ヒップホップと遜色ないダークなトラップサウンドが挙げられる。構成面でもう一点触れるなら、曲のラストにサビと同等かそれ以上に力強いビートで「クライマックス」を演出するブリッジ、いわゆるCメロパートの存在もBLACKPINKのシングルではお馴染みだ。その展開の変化の多い曲の構成は、前述の“Ice Cream(feat. Selena Gomez)”や“Bet You Wanna(feat. Cardi B)”と比べれば個性がより際立つし、その圧倒的にヘビーな音圧は、冒頭でも述べた通り韓国発のポップミュージックの中でも異彩を放ち、メインストリームのポップスというよりはクラブミュージックを聴いている感覚を起こさせる。

BLACPINK “Pretty Savage“を聴く(Spotifyを開く

10年代前半のEDMを彷彿とさせる“Lovesick Girls”。BIGBANGや2NE1ら先輩グループとの繋がりも

一方、同じく彼らが手掛けている本作のリード曲“Lovesick Girls”は少しムードが違う。ヒップホップ要素は減少し、シンセベースやメンバー4人が揃ってメロディをなぞるアンセミックなサビのパート、カントリー風なアコースティックギターのストロークなどEDMポップが主流だった2010年代前半頃のポップシーンにタイムワープさせるかのようだ。

筆者はこの曲を聴いて「新しいBLACKPINKらしさ」というよりは、サビのボーカルのアンセミックな雰囲気がこの曲と共通する“As If It’s Your Last”や、デビューシングル収録の“BOOMBAYAH”といった初期のシングルに近い印象を受けた。“As If It’s Your Last”にはダンスホールやユーロビートも取り入れたり、“BOOMBAYAH”はよりヘビーなクラブサウンドだったりといった違いはあれど、EDMサウンドのパワフルさに委ねるこれらの3曲は、製作陣のEDMというジャンルの、ラウドで、派手なサウンドへの憧憬も感じさせる。それは同時に、BLACKPINKと同じくTeddyらが多くの楽曲を手掛けたBIG BANG、2NE1といったYGエンタテインメントの先輩グループとの繋がりをより明確にするものだ。


BLACKPINK“Lovesick Girls“PV

昨年のEP『KILL THIS LOVE』発表時、アメリカの音楽メディア「Stereogum」で評論家のクリス・デヴィルがBLACKPINKのサウンドを「2010年代初頭のポップミュージックが誇らしげにして不愉快なほどラウドだった時代に連れていってくれる」と評していたのが興味深かったが、それはBLACKPINKにとってはデビュー当初から掲げてきたアイコニックなサウンドであり、本作にも通底しているものだろう。そのサウンド自体は世界的なポップミュージックシーンの中で真新しいものとは言えないが、彼女たち自身のパフォーマンスと一体化して強烈な個性となり、さらには、多くの曲で歌われるボースティング的な歌詞や、曲名にも登場したサヴェージ(凶暴さ)なイメージ、そしてメンバーのジスとジェニーも作詞に参加し、失恋の痛みを前向きに解釈しながら高らかに踊る“Lovesick Girls”(ロビンの“Dancing On My own”やロードの“Green Light”など2010年代の失恋アンセムたちとも並べたくなる)の内面からくる強さのイメージも強化している。

BLACKPINK『KILL THIS LOVE』を聴く(Spotifyを開く

世界のガールズグループの、新たなロールモデルへ

『THE ALBUM』はBLACKPINKの作品ではラストに配置されることが多い、優しいトーンのバラードスタイルの楽曲“You Never Know”を経て、あっという間に幕を閉じる。それは8曲24分というコンパクトなボリュームのせいではない。入念に作り込まれた完成度の高さによるものだ。各曲の歌のメロディやキメのフレーズ、シンセやブラスなどのリフレインはそれぞれすごくキャッチーだし、“Crazy Over You”の南アジアの音楽を彷彿とさせる笛の音に日本の三線かゴッタンのような弦楽器のサウンドなど、新鮮な音色のアイデアも中毒性を誘う。そして何より、4人それぞれ声色の違うボーカル、リサやジェニーのキレのいいラップなどレベルの高いパフォーマンスも聴きどころが多く、飽きることなく8曲一気に再生出来る。

彼女たちの作品は、ポップミュージックにおける歌、ラップ、ダンスといった質の高いパフォーマンスの持つ重みを今一度世界の音楽シーンに訴えかけているようだし、欧米のトレンドを追随していくというよりは、むしろ自分たちが世界のポップアクトから参照される存在になろうかのようだ。だからこそ、この『THE ALBUM』が、欧米のポップスのサウンドやプロダクションを取り入れながらも、あくまで今までの自分たちらしいサウンドを武器にしていることには説得力を感じる。本作は、BLACKPINKという、世界のガールズグループの新たなロールモデルにふさわしい初のフルアルバムだ。

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リリース情報

『THE ALBUM』
BLACKPINK
『THE ALBUM』

2020年10月2日(金)配信

1. How You Like That
2. Ice Cream (feat. Selena Gomez)
3. Pretty Savage
4. Bet You Wanna (feat. Cardi B)
5. Lovesick Girls
6. Crazy Over You
7. Love To Hate Me
8. You Never Know

サービス情報

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