ズーカラデルの歌が掬う、世間のカテゴライズに押し殺された声

ズーカラデルの歌が掬う、世間のカテゴライズに押し殺された声

2020/02/17
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:山川哲矢(Showcase)

「諦める」っていうことは長らく自分のテーマになってきたんですよ。進むために諦めるのは決して悪いことじゃない。

―元々は、カラッとした音楽よりも内側に潜っていくような音楽が好きだったと。それで言うと、グレーな感情を言い表すような歌がご自身の琴線に触れたのは、どうしてだったんだと思います? ご自身のパーソナリティーや生きてきた背景として。

吉田:……上手く言えないんですけど、そもそも自分は昔から「明るいのはいいよなあ」「明るく生きられたら楽しいだろうなあ」って思っちゃうところがあるんですね。自分がめちゃくちゃ暗いとは思わないけど、でも、明るくいられたらいいよなって羨ましくなる。そういう感じはもともと自分の中にあったと思いますね。

だからこそ、たとえば人にしても物事にしても、「それが今悲しい状態だとしても、それは決して悪いことではない」っていうことを、できるだけ素敵な感じで言いたい――僕は、そういう歌をたくさん書いてきた気がします。今まで考えたこともなかったんですけど。

左から:鷲見こうた、吉田崇展、山岸りょう
左から:鷲見こうた、吉田崇展、山岸りょう

―たとえば“アニー”では<ねえ 素晴らしくないけど / 全然美しくないけど / YOU AND I 泥だらけの / 僕らの世界を歌え 何度も>というラインが本当に美しいメロディで歌われていて。素晴らしくもないとされるもの、美しくないとされるものだとしても、その存在を讃えたい、みたいな気持ちなんですか。

吉田:讃えたいというよりは……もちろん生きていたら世界の中に悲しいことや頭にくることもたくさんあるんですけど、でも自分の生活レベルに引き寄せて考えてみたら、どれもがただ起こっている事象でしかないと思えるというか。他人事だということじゃなくて、どんなに大それたことも実は大したことではなくて、全部が個々の生活や捉え方次第でいろんな意味を持つだけっていうか……上手く言えないな(笑)。

世間的には悲しいことだと言われていることでも、そこにはいい面もあるかもしれない。世間的に楽しいとされていることでも、実は悲しい側面があるかもしれない。なんとなくのカテゴリーにもハマれない「普通」っていうのもアリじゃん、みたいなことを歌いたいんじゃないかなって。普通だけど、何も特別じゃないけど、それでいいじゃんって。それが自分の歌なのかな。

―ただ、「普通」であることへの諦めも歌いながら、それをひっくり返す一瞬を求めるような歌や、いろんなものを引き連れて行くようなリズムもこの音楽の中にたくさんあって。たとえば“イエス”に<最後の魔法は不発に終わるだろう / 誰にも気づかれないままで暴れ出す><不味かった昼飯の記憶が / 無駄な夜更かしの行方が / 見送ったあの日の夕焼けが / 未だに強く脈を打つ>という言葉があって。不味かった昼飯みたいに意味も感動もないものが一瞬でも輝ける魔法を求めて歌う感覚もあるんですか。

吉田:きっとそうなんでしょうね。確かに今言ってくれた<魔法>っていう言葉は直接的に歌っているし、それを求めているところは絶対あります。0だと思われていたものが0.1に切り替わる瞬間というか。それが好きなんですよ。で、それこそが目の前の世界が変わるっていうことだと思っていて。普通のもの、悲しいと思われているもの……そのどれもが、一瞬でもクルッと変わるような。それが出てる気はしますね。

あと、言われてすごいなと思ったのが、まさに「諦める」っていうことは長らく自分のテーマになってたんですよ。特に前作の『夢が醒めたら』は「何かを諦める」っていうことについて歌を書いていった感覚があったんですね。先ほども話したような「普通もアリじゃん」っていう感覚と同時に、しょうもないと言われるような普通の人でもなんとか生きていくために、何かを諦めていくことも必要な時がある。前に進むためなら「諦め」も決して悪いことじゃないと思うんですよ。

―はい。

何か大事なものがあるからこそ何かを諦めるっていうことも、生きていればきっとある。それは美しい選択だと思うし、「もうダメだ」って諦めるというより、そこにはその人にしかわからないドラマがあるっていうことなんです。些細かもしれないけど、誰もがそういう選択をしながら生きてる。それがテーマなんでしょうね。

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リリース情報

ズーカラデル『ズーカラデル』
ズーカラデル
『ズーカラデル』(CD)

2019年7月10日(水)発売
価格:2,546円(税込)
PECF-3235

1. 花瓶のうた
2. イエス
3. 漂流劇団 – NY mix
4. リトル・ミス・ストレンジ
5. 春風
6. 生活
7. ウェイティングマン
8. 恋と退屈 – NY mix
9. 青空
10. 光のまち
11. アニー
12. 前夜

プロフィール

ズーカラデル
ズーカラデル

左から:鷲見こうた(Ba)、吉田崇展(Vo,Gt)、山岸りょう(Dr)。札幌発のロックバンド。2015年、吉田崇展が中心となって「吉田崇展とズーカラデル」を結成。2017年9月に1stミニアルバム『リブ・フォーエバー』を発売し、改名。2018年に現体制となり、2ndミニアルバム『夢が醒めたら』を発売。2019年7月10日、1stフルアルバム『ズーカラデル』を発売。

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