ズーカラデルの歌が掬う、世間のカテゴライズに押し殺された声

ズーカラデルの歌が掬う、世間のカテゴライズに押し殺された声

インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:山川哲矢(Showcase)
2020/02/17
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シンプルなロックンロールだ。オーソドックスな3ピースバンドだ。そのはずなのに、このメロディとサウンドは魔法のように一瞬にして目の前の景色を変える。実は全然シンプルじゃない、生活の平凡さを実感しながらも一筋の光と魔法を求めるこんがらがった心模様を彩りに変えて歌い鳴らす楽曲。実は全然オーソドックスじゃない、ロックバンドというよりも楽団が行進していくように聴こえるリズムと音の重なり。何より、ロックバンドでありながら従来のロックのセオリーにまったく沿っていないスケールの大きなメロディがとんでもなく素敵だ。なんの変哲もないオーセンティックなスタイルの中に、驚くほど多くの独創と創造と想像が詰まっている。それがズーカラデルというバンドだ。

昨年7月に初のフルアルバム『ズーカラデル』をリリースし、彼らの名を全国の音楽ラヴァーズに知らしめた“アニー”をはじめ、そのポテンシャルが全解放された。スペースシャワーが主催し若手バンドの登竜門となっている『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR』への出演も決定し、あとは飛ぶだけとなった今である。どうして彼らの歌はこんなにも胸を掴んで離さないのか、たったそれだけを知りたくて、たったそれだけを語り合いたくて行ったインタビューが下記だ。

<ねえ 素晴らしくないけど / 全然美しくないけど / YOU AND I 泥だらけの / 僕らの世界を歌え 何度も>(“アニー”)。心で泣きながら顔で笑うような一節だ。不味かった昼飯や意味のない夜更かし、生産性のなかった時間たちは本当に意味がなかったものなのか? 名前のつかない時間たちは誰にも見つからないだけでそのまま消えてしまうのか? ああ自分はダメだなあと言い訳するためじゃなく、自分の存在をどうにか愛して生きていくためにはどうしたらいいのか? 吉田崇展が歌う、世界の真ん中からあぶれた言葉やモノたち。その背景にある想いを、たっぷりとどうぞ。

悲しいんだか嬉しいんだかわからない、グレーの部分を描けている音楽は素晴らしい。

―吉田さんは、どうしてこんなに素敵なメロディが書けるんですか。

吉田:はははは、いきなりですか(笑)。うーん……どうしてなのか……でも、自分では普通のメロディだと思ってるんですよ。今まで長い間J-POPや日本の歌を聴いてきて、「綺麗な旋律だな」って思った感じを自分も出したいと思って曲を作っていて。そういう意味で、ごく普通と思われている曲を書いてるつもりなんです。もちろん、自分自身が大好きだと思える曲を作っている自信はあるんですけど。

ズーカラデル『ズーカラデル』(2019年)を聴く(Spotifyを開く

―日本の音楽と言ってもいろいろあるし、世代的にも1990年代のJ-POPを通過してきたこともわかるんですけど。吉田さんの場合、素敵だと思うのはどういう音楽だったんですか。

吉田:エッジの立った活動をしている人なのに、音楽の中ではポップネスも持っている――そういうふうに、一面だけで語ることができないものに惹かれてきた傾向はありますね。あるいは、嬉しいんだか悲しいんだかわかんないような、いろんな感情が混ざっていて「これに名前をつけるとしたらなんなんだ?」って思っちゃうものにグッとくることが多かった。

最近まで地元(北海道)の実家に住んでたんですけど、よく母親と夜中に音楽を聴きながら、「この曲は何がいいのか」みたいな話をよくしていたんですね。その中でよく挙がっていたのが、「やっぱりグレーの部分をちゃんと描けている音楽は素晴らしい」っていうことだったんです。それは音楽を聴く時も音楽を作る時でも、自分にとって重要な部分になってますね。

ズーカラデル<br>左から:鷲見こうた(Ba)、吉田崇展(Vo,Gt)、山岸りょう(Dr)<br>北海道・札幌発のロックバンド。2015年、吉田崇展が中心となって「吉田崇展とズーカラデル」を結成。2017年9月に1stミニアルバム『リブ・フォーエバー』を発売し、改名。2018年に現体制となり、2ndミニアルバム『夢が醒めたら』を発売。2019年7月10日、1stフルアルバム『ズーカラデル』を発売。
ズーカラデル
左から:鷲見こうた(Ba)、吉田崇展(Vo,Gt)、山岸りょう(Dr)
北海道・札幌発のロックバンド。2015年、吉田崇展が中心となって「吉田崇展とズーカラデル」を結成。2017年9月に1stミニアルバム『リブ・フォーエバー』を発売し、改名。2018年に現体制となり、2ndミニアルバム『夢が醒めたら』を発売。2019年7月10日、1stフルアルバム『ズーカラデル』を発売。

―まず、お母さまと音楽について日頃から語り合うくらい、音楽は自然と生活の中にあったんですか。

吉田:テレビでよく音楽番組を見る家庭っていうくらいだったんですけど。家にレコードが何枚もあってっていう感じでもないし、僕自身も、音楽のルーツを深く掘り下げるようなタイプでもなくて。ただただ「音楽って楽しいなあ」くらいで育ってきたと思います。

―意外です。オーセンティックなロックンロールとしての印象を受ける一方、旋律にはロックバンドの王道と違うものがたくさん詰まっていると感じるんです。シンプルに聴ける楽曲の中でも、メロディの動きと楽曲の抑揚がめちゃくちゃ豊かで。

吉田:一体なんなんでしょうね?(笑)……自分の背景を思い返してみると、バンドの音楽を最初に意識したのはBUMP OF CHICKENだったんですよ。それ以前もMONGOL800が耳に入ってきたり、THE BLUE HEARTSが近くでかかっていたりはしたんですけど、高校1年生の時、BUMP OF CHICKENを友達に教えてもらった時に「なんて素晴らしいんだ!」と感動したんです。

Spotifyプレイリスト『This Is BUMP OF CHICKEN』を聴く(Spotifyを開く

吉田:その時に、自分もこういうことやれたらいいなって思ったんですよね。なんとなくですけど、これが自分にフィットしているものなのかもしれないっていう感覚があったし、これなら自分でもやれるかもしれないっていう衝撃があったんです。その時の衝撃のまま、今までやってきたような気もするんですよね。

―吉田さんにとってBUMP OF CHICKENのどういうところが素敵だったんだと思います?

吉田:要素はたくさんあるんですけど、BUMP OF CHICKENの発信しているものを受け取ればどうにか生きていけそうだって思える曲がたくさんあって。当時の自分にとって説得力のある歌詞がたくさんあったし、歌詞に対してメロディやサウンドデザインまで一体となってるのもいいなと思って。なんかこう……言葉にできない、名前のない感情を歌ってくれている感じがしたんですよね。それがよかったんです。

吉田崇展
吉田崇展

―先ほどご自身の音楽観を「グレーなものをちゃんと描けている音楽は素晴らしい」という言葉で話していただきましたけど、BUMP OF CHICKENの歌にはまさにそういうものが多いですよね。初期は特に物語的な歌が多かったですけど、それも、白黒の中間を描くようだったり、行間に自分を投影できたり、っていう魅力に繋がっていたと思うし。名前のない感情・事象に色をつけていくような。

吉田:まさにそうだと思います。たぶん、自分もBUMP OF CHICKENに受けた影響は大きいと思うし、そのよさを自分なりに出すことを考えている気がします。

……とはいえ、元々はポストロックに憧れてる、みたいなバンドをやってたんですけどね(笑)。その時は音楽的なことをやりたいっていう気持ちが先走って、Mogwai、Sigur Rosやtoeに憧れていて。それに『OK Computer』期のRadioheadも大好きでしたし。そこから、札幌のライブハウスでいろんなバンドと出会ううちに今のスタイルになってきたんですけど。


『ズーカラデル』(2019年)収録

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リリース情報

ズーカラデル『ズーカラデル』
ズーカラデル
『ズーカラデル』(CD)

2019年7月10日(水)発売
価格:2,546円(税込)
PECF-3235

1. 花瓶のうた
2. イエス
3. 漂流劇団 – NY mix
4. リトル・ミス・ストレンジ
5. 春風
6. 生活
7. ウェイティングマン
8. 恋と退屈 – NY mix
9. 青空
10. 光のまち
11. アニー
12. 前夜

プロフィール

ズーカラデル
ズーカラデル

左から:鷲見こうた(Ba)、吉田崇展(Vo,Gt)、山岸りょう(Dr)。札幌発のロックバンド。2015年、吉田崇展が中心となって「吉田崇展とズーカラデル」を結成。2017年9月に1stミニアルバム『リブ・フォーエバー』を発売し、改名。2018年に現体制となり、2ndミニアルバム『夢が醒めたら』を発売。2019年7月10日、1stフルアルバム『ズーカラデル』を発売。

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