ISSUGIが語る、「なにをやらないか」が個性になる

ISSUGIが語る、「なにをやらないか」が個性になる

インタビュー・テキスト
宮崎敬太
撮影:寺内暁 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)
2019/12/12
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普通に音楽をやれることのありがたさを病気になって痛感させられた。

ISSUGI

―『GEMZ』ではバンド以外にも、数多くのミュージシャンが参加していますね。今回、多くのミュージシャンとの共作を選択したのはなぜですか?

ISSUGI:『Thursday』(2009年)や『EARR』(2013年)の頃は、割とビートもラップも自分1人で完結していました。自分の音楽性と持つ色を聴き手に伝えるには、アルバム全曲16FLIPで両方やって聴かせるのが一番手っ取り早いと思ってたんです。

リスナーとしてもプロデューサーの色に統一感があるアルバムが昔から好きだったりしたので。でもビートメーカー誰かと1枚とか一緒に作ることを何回か経験するうちに、グルーヴが合わさって混ざって起こる化学反応が面白いと思うようになったすね。やっぱりヒップホップはラッパーやビートメイカーがただ個体で存在しているというより、それぞれの関係性と距離感で生まれる音楽が面白いし熱いから。そういう動きが見え易いのがヒップホップの面白さのひとつだと思う。

ISSUGI『Thursday』(2009年)を聴く(Spotifyを開く

―さまざまなプロデューサーとタッグを組んだ『7INC TREE』シリーズやBESさんとの共作が関係しているんですね。

ISSUGI:はい。とはいえ、別に自分がハブのような存在になりたいとか考えて作品作りをしてるわけじゃないんですよ。単純にやりたい人とやってるだけで、結果として誰かと誰かが繋がっていけばいいですね。

福岡に住んでるビートメーカーのGQってやつと東京に住んでる弗猫建物のVANYってやつが仲良くなってたりしてて嬉しかったりするし。

―ISSUGIさんが一緒にやりたいと思う基準とはどんなところにあるんですか?

ISSUGI:センスに共感できるということかな。あとは俺1人では表現しきれない、音楽的な幅広さを一緒にやることで表現できる人。ビートメーカーだったらそのビート聴いて上がるかどうかだけですね。

それが前提で、あとは単純に自分がリスナーだったとしてチェックしてるアーティストが意外な人と曲を作ってると面白いじゃないですか? そんな感覚もあって『7INC TREE』はまさにそういうシリーズだったと思いますね。

ISSUGI『7INC TREE』(2017年)を聴く(Spotifyを開く

―これだけ多作でも、まだまだ表現しきれないものがあるんですね。

ISSUGI:そうですね。作りたい気持ちはなくならないですね。もっとアルバムを出したいし、やったことないビートメイカーと曲を作りたい。ちょっと前にジョージア・アン・マルドロウ(アメリカのジャズ、ソウルシンガー)と一緒に制作したのも初めてR&B作れたくせーと思って楽しかった。もっと海外で活動できたらいいですけど全然できてないですね(笑)。

とりあえずいつも、そのときの自分がいいと思ってる音楽を作っています。だからリスナーの人たちが、俺のいままでの作品とこれからの動きを線で追って総合的に楽しんでもらいたいんですよね。

16FLIP feat. ジョージア・アン・マルドロウ『Love it though』(2019年)を聴く(Spotifyを開く

ISSUGI

―……これは余談に近いんですけど、ここまでストイックに音楽に打ち込むISSUGIさんでも不安になることってあるんですか?

ISSUGI:全然ありますよ(笑)。不安の種類によりますけど。SICKTEAMの『SICKTEAM』と『EARR』を出す間くらいに顔面神経麻痺になっちゃったときとか。ある日、九州にライブ行く前日に顔の左側が麻痺してしまって。

いま考えると命にも関わらない全然大したことではないのでアレですが。なってすぐはどういう感じにどの程度回復する病気か調べてなかったので、焦ってこのまま顔の左だけ動かないとラップしづらいなとか、左耳と右耳の聴感が対称じゃないのがわかってたので作ってる曲に対して、自分は左右こういうバランスで聴こえてるけどみんなにはどう聴こえてるのかな? とかがあってこの感覚で音楽を続けていけるのか、不安な感覚はありました。

ISSUGI『EARR』(2013年)を聴く(Spotifyを開く

―そんなことがあったんですね。

ISSUGI:色んな方にやさしい言葉をもらいましたね。それで“ONE ON ONE”ていう曲もできたし。正常に顔の神経が再生していく過程で口を動かす神経と目を閉じる神経が繋がりやすいので、そこはちょっといまも喋ったりラップすると引っ張られてダルいんですけど(笑)。ほぼ回復したしもう問題ないですね。実は俺のリリースペースが上がったのはそこからなんですよ。普通に音楽をやれることのありがたさを病気になって痛感させられて。

―ISSUGIさんの活躍ぶりには、その経験も関係していたんですね。

ISSUGI:そうですね。とりあえずやれるし作ろうみたいな感じで。あとはいつも自分に対してもっとヤバいの作れるっしょみたいな悔しさが音楽をやる原動力になってる部分もあります。だからリリースし続ける。そこに、ちゃんと意味があると思ってるんですよ。

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リリース情報

ISSUGI
『GEMZ』(CD)

2019年12月11日(水)発売
価格:2,750円(税込)
レーベル:P-VINE, Inc. / Dogear Records
品番:PCD-25284

1. GEMZ INTRO / prod BUDAMUNK
2. ONE RIDDIM / prod BUDAMUNK
3. NEW DISH / prod 16FLIP & BUDAMUNK
4. BLACK DEEP ft. Mr.PUG, 仙人掌 / prod 16FLIP
5. DRUMLUDE / prod BUDAMUNK
6. HERE ISS / prod 16FLIP
7. LIL SUNSHINE REMIX
8. FIVE ELEMENTS ft OYG, Mr.PUG, 仙人掌 / prod BUDAMUNK
9. 踊狂REMIX ft. 5lack / prod BUDAMUNK
10. OLD SONG ft DEVIN MORRISON / prod BUDAMUNK
11. HEAT HAZE REMIX ft Mr.PUG / prod ENDRUN
12. LOUDER / prod 16FLIP & DJ SCRATCH NICE
13. MISSION ft KOJOE / prod HIKARU ARATA
14. 再生 / prod BUDAMUNK
15. No.171 / prod BUDAMUNK
16. GEMZ OUTRO / prod BUDAMUNK

プロフィール

ISSUGI(いすぎ)

東京出身のRapper / Beatmaker。MONJU(ISSUGI / Mr.Pug / 仙人掌)、SICKTEAM(5lack / ISSUGI / Budamunk)としても活動し、16FLIP名義でビートメイクもこなす。ソロを含めこれまでに複数のアルバムをリリース。

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