崎山蒼志と君島大空、2人の謎を相互に解体。しかし謎は謎のまま

崎山蒼志と君島大空、2人の謎を相互に解体。しかし謎は謎のまま

崎山蒼志『並む踊り』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:松永つぐみ 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

君島さんの音楽を聴いていると、美術室の窓から光が入っていた光景を急に思い出したりします。なにかが「もたらされる」ような……。(崎山)

―でも、僕としても、君島さんがおっしゃっていることにはハッとしました。崎山さんの音楽を聴くと、「歳を重ねたから、過去のことを思い出す」ということではない形で、「なにかを思い出す」という状態が、人にはあるんだって思います。

君島:そうなんですよね。崎山くんの歌詞は、「知ってしまった」感じがするんです。

崎山:僕としても、君島さんの曲は、こっちが感覚を研ぎ澄ませば研ぎ澄ますほど聴こえてくるものがあるような気がします。いけばいくほど、いける。君島さんの曲を聴いていると、小学校とか中学校の頃のような、繊細な心で見ていた視点を思い出す感覚があるんです。別に、その頃が輝いていたわけではないし、当時を好きっていうわけではないんですけど……僕、美術部だったんですけど、君島さんの音楽を聴いていると、美術室の窓から光が入っていた光景を急に思い出したりします。なにかが「もたらされる」ような……。

左から:崎山蒼志、君島大空

君島:「もたらされる」っていうのは、僕も崎山くんの音楽に感じます。決して、押しつけられているような感覚はない。「こんな場所に窓があったんだ」みたいな感覚。今まで知らなかった場所から光が入ってくるような……「そんなことをしてくれて、ありがとう」って思います。

崎山:いやいやっ……恐縮です、本当に。僕も君島さんの音楽を聴いて、ここまで「わからない」感覚に入り込んでくる人はいないなって思います。

君島:そう言ってくれるのは本当に嬉しいです。特に『午後の反射光』は、自分にしかわからないことについての音源なので。「聴かれなくてもいい」くらいに思いながら作った音楽に対して、そういう感想を持ってくれるのは嬉しいです。

左から:崎山蒼志、君島大空

―『午後の反射光』リリース時のインタビューでも、この作品はとても「自分」に満ち溢れたものである、とおっしゃっていましたよね(参考記事:君島大空が求める「ギリギリ、音楽」。繊細な芸術家の脳内を覗く)。

君島:僕の音楽には、わりと明確に「対象」があるんですけど、その音楽のなかで対象にしているものっていうのは、本来、絶対に接近しえないものなんです。でも、音楽によってなら、「それ」に自分が接近できるのではないか? っていうイメージが、自分のなかにはずっとあって。もう会うことが叶わない存在や時間に、自分が限りなく接近して、そこにずっといたい……きっと僕は、そういうコンセプトでこの先も音楽を作っていくし、その欲求がなくなれば、僕は音楽を作らなくなるかもなって思います。

自分が本当に心から「いい曲だ」と思える曲が書けたら、「もうやめてもいいかな」って思うのかもしれないです。(崎山)

―ナンセンスな質問だと思うんですけど、崎山さんは、「これが果たされれば、音楽を辞めていいかもしれない」みたいなものは、現状ありますか?

崎山:僕は最近、ライブで“Woman "Wの悲劇"より”をカバーしているんですけど、あの曲は、松本隆さんによる歌詞も、ユーミンさん(松任谷由実、名義は呉田軽穂)による曲も、本当に研ぎ澄まされていて、完璧な曲だなっていう感じがするんです。ああいう曲を作れたら、「もうやめていい」って思うのかもしれないですけど……。

薬師丸ひろ子“Woman "Wの悲劇"より”を聴く(Spotifyを開く

―それは、さっきのちゃんと構築された曲が作りたいっていう感覚に通じるものですかね?

崎山:そうですね。でも僕は、そういう曲は書けないような気がします。話はちょっと違うかもしれないですけど、ゆらゆら帝国が『空洞です』を作ったあとに、坂本慎太郎さんが「完璧だと思うアルバムが作れたからやめる」って言ってバンドを解散させた話があるじゃないですか。かっこいいなって思います。同じように、自分が本当に心から「いい曲だ」と思える曲が書けたら、「もうやめてもいいかな」って思うのかもしれないです。そうしたら、急にハードメタルとかをやり出すかもしれない。

左から:君島大空、崎山蒼志

君島:ヘヴィメタルじゃなくてハードメタルなんだ(笑)。

崎山:本当は、今からでもやりたいんですけど。

君島:わかる。僕も、実はそういう音楽をやりたいっていう気持ちがあって、それ用の「HEAVY」(Empress Effects)っていうエフェクターを買ったんですけど。

崎山:本当ですか? 僕もこの間、HARD OFFで3000円だった「DEATH METAL」(DIGITECH)っていうエフェクターを買いました。

君島:ヤバいね(笑)。

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リリース情報

『並む踊り』(CD+DVD)

2019年10月30日(水)発売
価格:2,728円(税抜)

[CD]
1. 踊り
2. 潜水(with 君島大空)
3. むげん・(with 諭吉佳作/men)
4. 柔らかな心地
5. 感丘(with 長谷川白紙)
6. 夢模様、体になって
7. 烈走
8. 泡みたく輝いて
9. Video of Travel
[DVD]
1. ドキュメント「崎山蒼志 LIVE 2019 とおとうみの国」
2. 「国」ミュージックビデオ

イベント情報

『崎山蒼志 TOUR 2019 「並む踊りたち」』

2019年10月28日(月)
会場:東京都 渋谷 CLUB QUATTRO

2019年11月3日(日・祝)
会場:香川県 高松 SPEAK LOW

2019年11月4日(月・振休)
会場:大阪府 梅田 TRAD

ゲスト:諭吉佳作/men

2019年11月10日(日)
会場:東京都 神田明神ホール

ゲスト:長谷川白紙

2019年11月16日(土)
会場:福岡県 ROOMS

2019年11月17日(日)
会場:広島県 SECOND CRUTCH

2019年11月30日(土)
会場:愛知県 名古屋 JAMMIN'

2019年12月15日(日)
会場:静岡県 浜松 窓枠

ゲスト:君島大空

2019年12月21日(土)
会場:宮城県 仙台 HooK

2019年12月22日(日)
会場:北海道 札幌 KRAPS HALL

料金:各公演 前売3,700円(ドリンク別)

プロフィール

崎山蒼志(さきやま そうし)

2002年生まれ静岡県浜松市在住。母親が聞いていたバンドの影響もあり、4歳でギターを弾き、小6で作曲を始める。2018年5月9日にAbemaTV『日村がゆく』の高校生フォークソングGPに出演。独自の世界観が広がる歌詞と楽曲、また当時15歳とは思えないギタープレイでまたたく間にSNSで話題になる。2018年7月18日に「夏至」と「五月雨」を急きょ配信リリース。その2か月後に新曲「神経」の追加配信、また前述3曲を収録したCDシングルをライヴ会場、オンラインストアにて販売。12月5日には1stアルバム『いつかみた国』をリリース、併せて地元浜松からスタートする全国5公演の単独ツアーも発表し、即日全公演完売となった。2019年3月15日にはフジテレビ連続ドラマ『平成物語』の主題歌「泡みたく輝いて」と明治「R-1」CM楽曲「烈走」を配信リリース。5月6日に自身初となるホール公演「とおとうみの国」を浜松市浜北文化センター大ホールで大成功させた。10月30日に2ndアルバム『並む踊り』をリリースした。

君島大空(きみしま おおぞら)

1995年生まれ日本の音楽家。高井息吹と眠る星座のギタリスト。2014年からギタリストとして活動を始める。同年からSoundCloudに自身で作詞/作曲/編曲/演奏/歌唱をし多重録音で制作した音源の公開を始める。ギタリストとしてタグチハナ、konore、坂口喜咲、婦人倶楽部、Orangeade、などのアーティストのライブや録音に参加する一方、2017年には霞翔太監督作品「離れても離れてもまだ眠ることを知らない」の劇中音楽を担当。アイドルグループsora tob sakanaへの楽曲提供など様々な分野で活動中。2019年3月、1st EP『午後の反射光』をリリース。2019年7月、『FUJI ROCK FESTIVAL’19「ROOKIE A GO-GO」』へ出演を果たした。

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