川谷絵音の仕事を「ポップス」と「オルタナティブ」から読み解く

川谷絵音の仕事を「ポップス」と「オルタナティブ」から読み解く

2019/11/22
テキスト
金子厚武
編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

海外のトレンドに目配せをすることで、つねにアップデートされ続ける楽曲

「ポップス」と「オルタナティブ」を軸にしながら、一音楽ファンとしての感覚で、つねに海外のトレンドにも目配せをしているからこそ、彼の楽曲はアップデートを保っていられる。なおかつ、それが「寄せる」とか「取り入れる」といった小手先のやり方ではないこともポイントだ。

例えば、ゲス乙女のライブでの定番曲である“キラーボール”という曲。

ゲスの極み乙女。“キラーボール”を聴く(Spotifyを開く

この曲の存在によって、ゲス乙女も一時期は「4つ打ちロック / フェスロック」という括りに入れられたりもしていたが、この曲のモチーフとなっていたのは北アイルランド出身のTwo Door Cinema Clubで、一世代上のサカナクションが当時の海外のエレクトロを日本語のポップスとして鳴らそうとした感覚に近いと言える。「フェスで盛り上がる」を理由に、4つ打ちを取り入れたバンドが一時期のブームを経て、勢いを失って行った中にあって、ゲス乙女が今もフェスのメインステージに立ち続けている背景には、明確な目線の違いがある。

Two Door Cinema Club“”What You Know”を聴く(Spotifyを開く

そして、2010年代における海外のトレンドといえば、それはやはりヒップホップ、R&B、ファンク、ジャズといった広義の「ブラックミュージック」であり、それが日本における「シティポップ」のブームとも紐づくわけだが、ゲス乙女というバンドはそもそも結成当初から「プログレヒップホップ」を名乗り、ジャズの要素も多分に含んだバンドであった。名称自体はある種のジョークだったと思われるが、2010年代におけるジャンルの融解をリスナーとしての肌感で理解していたのは重要なことだ。

リズムの構築や声ネタの使い方などに「トラップ以降」を感じさせる折衷的なトラックメイクを基調としたゲス乙女の“ドグマン”をはじめ、近年の川谷ワークスにビートミュージック的な楽曲が少しずつ増えているのも、こうした背景を考えれば自然なこと。

ゲスの極み乙女“ドグマン”を聴く(Spotifyを開く

一時期までは、国内における「フェスロック」の流れと、「シティポップ」以降の流れには断絶があったように思うが、そのミッシングリンクとなったのが、ゲス乙女やインディゴだったと言ってもいいのでは。TikTokに端を発する、AOR的な“夏夜のマジック”の再評価にしても、川谷の楽曲のポップスとしての強度を証明すると同時に、こうした文脈でも捉えることができるはずだ。

Indigo la End“夏夜のマジック”を聴く(Spotifyを開く

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