Foalsの歩みとともにライター4人が語る、2010年代のUKロック

Foalsの歩みとともにライター4人が語る、2010年代のUKロック

2019/11/29
Foals『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1&2』
インタビュー・テキスト
天野龍太郎
編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「ロック不遇の時代」のはじまり。ロックバンドたちは、混乱の時代に突入していく

―Foalsの4枚目『What Went Down』のリリースは2015年なんですけど、2014~2015年のUKロックの印象はかなり薄いんですよね。『NME』の年間ベスト1位を見ると、2014年がSt. Vincent、2015年がGrimesと、両方北米のアーティストのアルバムです(外部リンクを開く① / 外部リンクを開く②)。

小熊:この頃にデビューしたWolf Aliceはデカいんじゃないですかね。UKのバンドがいかにアメリカで存在感を示すか、その模範解答を出したバンドだと思います。一方のFoalsはアート性と大衆性のバランスを取りながら理想的なものを作っていて、可愛げがないくらい隙がなさすぎる(笑)。

あと、Museの『Drones』が出たのもこの年。2010年代の彼らは、エレクトロニックに接近したり、ハードロック回帰したりと、ひたすら悪戦苦闘してきた印象がありますね。次作『Simulation Theory』(2018年)もロックの辛い現状をモロに反映したアルバムでした。


Foals『What Went Down』収録曲(Spotifyで聴く


Wolf Alice『Creature Song EP』(2014年)収録曲(Spotifyで聴く


Muse『Simulation Theory』収録曲(Spotifyで聴く

―「ロックの辛い現状をモロに反映したアルバム」というのは?

小熊:時代を意識しすぎて、自分たちのストロングポイントを見失っているというか。ポップ~R&B系のプロデューサーを起用してボトムを現代風にしつつ、『ストレンジャー・シングス』人気も踏まえて1980年代っぽいシンセを鳴らす、その狙いは的確だけど「どんなバンドだったんだっけ?」って思わずにいられないというか。それでも全英チャート1位を維持し続けているから偉いですけど。

そんな感じで、2010年代の中盤以降はロック大混乱の時代に突入していくと。UKでもいよいよラップが中心になってきて、SkeptaがDrakeにフックアップされたように、ローカルのシーンが海外進出していくわけですよね。

―Skeptaのヒット作『Konnichiwa』が2016年。『マーキュリー賞』を獲ったので驚きました。また、同年にデヴィッド・ボウイが『Blackstar』を遺して亡くなったことも重要です。2017年の『マーキュリー賞』はエレクトロニック~R&B系のSamphaが受賞し、J HusやStormzy、ロイル・カーナーといったラッパーたちの作品がノミネートされています。

小熊:いろいろなジャンルの音楽を楽しめる人にとっては、この頃はイギリスの音楽を聴くのが楽しくてしょうがなかったんですよね。

「ヒップホップがロックを使う側になった」

―見方を変えると、ロックというジャンルが相対化されたことでいい流れができてきた。ロックイズム≒マッチョイズムが解体されたことで、変化が起きたのではと。

照沼:別にロックが音楽の中心である必要はないですからね。『Rock This』ってSpotifyの巨大な公式プレイリストにはポスト・マローンとかが入っているわけで。

プレイリスト『Rock This』を聴く(Spotifyを開く

―「ロック」がラップやポップに奪われていったと見ることもできます。

小熊:ポスト・マローンがAerosmithのスティーヴン・タイラーと共演したり、みたいな話ですよね。

―新作『Hollywood’s Bleeding』(2019年)ではオジー・オズボーンを客演させています。2010年にKing Crimsonの“21st Century Schizoid Man”をサンプリングしたカニエ・ウェストの“Power”を聴いたときに驚いたんですけど……。

小熊:あの曲で歌ってるグレッグ・レイクは、サンプリングされたのが嬉しかったらしくて、ライブのSEで“Power”を使ってたらしいです(笑)。


カニエ・ウェスト『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』(2010年)収録曲(Spotifyで聴く

―ヒップホップがロックを使う側になったと感じたんです。それはポスト・マローンやXXXTentacion、トラヴィス・スコットのような自分たちのことを「ロックスター」と呼ぶラッパーたちの登場に直結していたんじゃないかと。彼らは自分のことをデヴィッド・ボウイかフレディ・マーキュリーだと思っていそうですし(笑)。

小熊:Rae Sremmurdの“Black Beatle”もその象徴ですよね。ぶっちゃけ、The Beatlesのことそんなに知らないだろって(笑)。でも、保守的なビートルマニアよりもThe Beatlesの精神に近いとも言えるわけで。

―しかも、“Black Beatle”ってもともとはカニエが言った言葉なんですよね。ただ、「ロック」ってヒップホップの世界ではよく使われていた言葉ですし、ロックとヒップホップの関係を遡ればRun-DMCとAerosmithの“Walk This Way”だってある。


Aerosmith『Toys in the Attic』(1975年)収録曲(Spotifyで聴く

「最近のロックに足りてなかったのはこれじゃないかな」(小熊)

小熊:Foalsの最新作『Everything Not Saved Will Be Lost - Part 1 & 2』(2019年)の話をすると、イマドキ2枚組で、ちゃんと中身が詰まっているのがすごいですよね。2作リリース時期をずらしたのは、話題性を長持ちさせる効果もあるだろうし、「いまどき2枚通してアルバムを聴く人なんていない」っていう現実とも向き合ってる。そういう意味で、やり方が今っぽい。


Foals『Everything Not Saved Will Be Lost - Part 1』収録曲(Spotifyで聴く

天井:『Total Life Forever』から『What Went Down』までは割と同じ方向性で発展していった感じだったけど、今回は初期の頃の彼らのようにいろいろなアプローチにトライしていますよね。

『Part 1』にはヤニスとトニー・アレンのコラボレーションを元にした曲も収録されていますが、2枚とも基本セルフプロデュースということで今までと制作方法を変えたところも多いらしく、そのせいもあるのか新鮮に聴けました。『Part 1』と『Part 2』で音楽的にそこまでコントラストが出ているわけじゃないけど、『Part 1』と『Part 2』は1stアルバムと2ndアルバムの関係にたとえられる印象も受けましたね。


Foals『Everything Not Saved Will Be Lost - Part 2』収録曲(Spotifyで聴く

照沼:僕はDrakeの『More Life』(2017年)っぽいと感じましたね。やりたいことがあるからいろいろやってみた、みたいな。プレイリスト感もある。

小熊:The Clashの『London Calling』(1979年)みたいに、昔のロックレジェンドは創作意欲がピークを迎えると、2枚組アルバムでサウンドの幅を広げて、最高傑作をモノにしてきた。そういう攻めの姿勢が『Everything Not Saved Will Be Lost』には感じられますね。最近のロックに足りてなかったのはこれじゃないかな。

しかも売れていて、『Part 2』は全英1位。『Part 1』は『マーキュリー賞』にノミネートされている。ノミネートの顔ぶれはここ10年で大きく変わったのに、今もそのなかにいるFoalsは大したものですよ。

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リリース情報

『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』(CD)
Foals
『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』(CD)

2019年10月23日(水)発売
価格:2,640円(税込)
SICX141

1. Red Desert
2. The Runner
3. Wash Off
4. Black Bull
5. Like Lightning
6. Dreaming Of
7. Ikaria
8. 10,000 Ft.
9. Into the Surf
10. Neptune

『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』(CD)
Foals
『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』(CD)

2019年3月8日(金)発売
価格:2,640円(税込)
SICX122

1. Moonlight
2. Exits
3. White Onions
4. In Degrees
5. Syrups
6. On The Luna
7. Cafe D'Athens
8. Surf, Pt. 1
9. Sunday
10.I'm Done With The World (& It's Done With Me)

イベント情報

『Foals 来日ツアー』

2020年3月3日(火)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2020年3月4日(水)
会場:大阪府 BIGCAT

2020年3月5日(木)
会場:東京都 新木場STUDIO COAST

プロフィール

Foals
Foals(ふぉーるず)

英オックスフォード出身、ヤニス・フィリッパケス(Vo,Gt)、ジミー・スミス(Gt)、ジャック・ベヴァン(Dr)、エドウィン・コングリーヴ(Key)からなる4人組のロックバンド。全オリジナルアルバムが、全英チャートにてTOP10入りを果たしている。ゼロ年代から「非オーソドックス」を探求し続け、この10年の間には海外大型フェスティバルのヘッドライナーを飾る唯一無二なバンドへと進化を遂げ、2019年、共通のテーマ、アートワーク、タイトルをもつ、2枚の新作『Everything Not Saved Will Be Lost』を発表。その『Part 1』が3月8日に全世界で発売となり、『SUMMER SONIC 2019』では圧倒的なライブを披露した。『Part 2』は10月にリリースされ、初の全英1位を獲得した。2020年には6年ぶりとなる単独ツアーが決定している。

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