蜷川実花の生き方と『FOLLOWERS』。ブレずに歩み続ける覚悟

蜷川実花の生き方と『FOLLOWERS』。ブレずに歩み続ける覚悟

2020/03/27
インタビュー・テキスト
後藤美波(CINRA.NET編集部)
久野剛士
撮影:下屋敷和文 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)

自分を信じ切れるだけの努力と、自分を疑う俯瞰の目を持つことが重要。

―今作のクライマックスに、「汝の道を進め」というセリフがあります。お話を伺っていて、蜷川さんもこの境地に至っているように見えたんですが、それまでにはどのような心境の変遷があったんでしょう。

蜷川:まだ私もその境地には至っていなくて。「そうでありたい」と、自分に言い聞かせているんだと思います。190カ国に配信する作品に取り組むとなったときは、自分の脳内のネジを抜いて、「自分はイケてるんだ」と言い聞かせないといけない。

私もみなさんと同じ普通の人間なので、どうしたって映画やドラマを作るときにプレッシャーを感じます。こんなにお金をかけてもらって、これだけ多くの人が関わったり、俳優さんたちが素敵な演技をしてくれたりして、それでも失敗したらどうしようって、恐ろしい。でも、そこで悩んでいたら一歩も前に進めない。

だから、進むためにも自分を信じきる力や、「あれだけ勉強したんだし大丈夫」と思えるだけの努力をすることが大事だと思います。その一方で、「本当にこれでいいのかな」と自分に疑いを持つ俯瞰の目も大切。他のみなさんもそうだと思いますけど、その両方が自分の中で同居していないと、なかなかものは作れないと思います。自信だけを持って仕事している人なんて、1人もいないと思いますよ。

蜷川実花

―そうですね。人それぞれが悩み抜いて生きているし、無邪気さだけで生きているはずがない。

蜷川:たとえば、初めての映画監督作である『さくらん』(2007年)のとき、「オールスタッフ」といって80人くらいを前に挨拶しないといけないことがあったんです。話そうと思ったら右手が震えてきて……。その震える右手を左手で必死に押さえながら挨拶をしたんですよ。常に、そういうことなんです。それでもやらないと前に進めないだけで。

あとは、どんなことがあっても「ステージから降りない」という覚悟があるかどうかですね。みんな、簡単に降りたがるじゃないですか。たしかに降りたほうが楽ですし、もちろん全員がステージに上がる必要はない。でも、「なにかをやりたい」と思うのであれば、そのステージに立ち続ける覚悟を持たないと始まらないですね。

―さきほどは「若者が生きづらい世の中になっている」とおっしゃっていましたが、まさにステージを降りない覚悟を持ってキャリアを重ねられた蜷川さんは、若い時期より生きやすくなったと感じますか?

蜷川:30代になったときに、だんだんやりたいことができるようになってきたと感じたんですよ。20代は下積みの時代ですから、やりたい仕事もなかなかこないし、理不尽な目にも遭います。でも、20代にどれだけやったかは、30代以降に効いてきました。40代になったら、もっとすんなりやりたいことができるようになった。私は、20代、30代には2度と戻りたくないと思ってますし、当時できることはすべてやりきったので、そのご褒美だと思っています。

あと、「子育てと仕事を両立するなんて無理だ」「大人は大変そう」っていう空気も、一部の若い子たちは感じていると思います。でも、そんなことはなくて、自分の人生をしっかり歩めば、面白いことはたくさんありますよ。もちろん苦しいこともありますけど、大人って楽しいものだと思う。そう考えることが「どこをピックアップするか」ということなんです。

『FOLLOWERS』より
『FOLLOWERS』より

蜷川実花

Page 3
前へ

番組情報

『FOLLOWERS』
Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』

Netflixで世界190カ国独占配信中
監督:蜷川実花
出演:
中谷美紀
池田エライザ
夏木マリ
板谷由夏
コムアイ
中島美嘉
浅野忠信
上杉柊平
金子ノブアキ
眞島秀和
笠松将
ゆうたろう
ほか

プロフィール

蜷川実花(にながわ みか)

写真家、映画監督。木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。映画『さくらん』(2007)、『ヘルタースケルター』(2012)、『Diner ダイナー』(2019)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019)監督。映像作品も多く手がける。2008年、「蜷川実花展」が全国の美術館を巡回。2010年、Rizzoli N.Y.から写真集を出版、世界各国で話題に。2016年、台北の現代美術館(MOCA Taipei)にて大規模な個展を開催し、同館の動員記録を大きく更新。2017年、上海で個展「蜷川実花展」を開催し、好評を博した。2018年熊本市現代美術館を皮切りに、個展「蜷川実花展—虚構と現実の間に—」が全国の美術館を巡回中。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事就任。

感想をお聞かせください

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
回答を選択してください

ご協力ありがとうございました。

Category カテゴリー

What's "Kompass" ? コンパスとは

「Kompass」は、ネットメディア黎明期よりカルチャー情報を紹介してきたCINRA.NETと、音楽ストリーミングサービスの代表格Spotifyが共同で立ち上げた音楽ガイドマガジンです。ストリーミングサービスの登場によって、膨大な音楽ライブラリにアクセスできるようになった現代。音楽の大海原に漕ぎだす音楽ファンが、音楽を主体的に楽しみ、人生の1曲に出会うガイドになるようなメディアを目指し、リスニング体験を交えながら音楽の面白さを紹介しています。