今、ロックが立ち向かう敵は気候変動? 大谷ノブ彦×柴那典が語る

今、ロックが立ち向かう敵は気候変動? 大谷ノブ彦×柴那典が語る

テキスト
柴那典
撮影:Uwabo Koudai 編集:中島洋一、中田光貴(CINRA.NET編集部)

一番大事なのは社会的なメッセージをどう表現の強度とかポップさに繋げるかということ。(柴)

:テイラー・スウィフトって、ずっとゴシップとか悪評に晒されて、それと戦ってきた人じゃないですか。

大谷:うんうん。前の『reputation』がそういうことへの復讐というか、めっちゃ攻撃的なアルバムだった。

テイラー・スウィフト『reputation』を聴く


テイラー・スウィフト『reputation』(2017年)収録曲

:で、デビューからずっと政治的なスタンスは明らかにしてなかったんですけど、去年の秋に民主党を支持することを明らかにした。だから新作はどうなるかなって思ってたんですけど、『Lover』は基本は全曲ラブソングなんです。曲もメロディアスだし、すごくロマンティックなアルバムになってる。

テイラー・スウィフト『Lover』を聴く

大谷:初期の頃に戻ってきた、みたいな?

:そうとも受け取れるんですけど、もうちょっと深いんですよ。というのも、アルバムには彼女が自分で解説を書いていて。この作品が生まれたのは、自分が10代の頃につけてた日記を読み返したのがきっかけだった、って書いてるんです。私は誰かに自分のことがどう言われてるかじゃなくて、私は自分の愛するもので私を定義する、って書いていた。

大谷:なるほど! だから『Lover』なんだ。「あなたの好きを肯定する」ってことですね。DJダイノジがそう言ってたのを見たのかな(笑)。

:ははははは! しかも、そのアルバムのリード曲が“You Need to Calm Down”ですからね。炎上させようと怒ってる人に対して「ちょっと落ち着いて」って言ってる。この曲をMTVのVMA(MTV Video Music Awards)で披露したときのパフォーマンスがまた最高なんですよ。

大谷:これ、最高! たまんないわ! 踊ってる人にもゲイとかいろんな人がいますね。これも意味があるんでしょ?

:もちろんそうです。歌詞にもLGBTを示唆する言葉が入ってるし、背景がレインボーカラーなのにも、ちゃんと全部意味がある。

大谷:かっこいいな。めっちゃいい。

:社会的なメッセージがあるから偉いということじゃなくて、一番大事なのはそれをどう表現の強度とかポップさに繋げるかということだと思うんです。テイラー・スウィフトだってパッと見て楽しい感じが伝わってくるし、ちゃんと紐解けば「好きなもので繋がろう」っていうメッセージがそこに込められてるのがわかる。

大谷:そういえば、こないだ久々にダイノジの独演会やったんですけど、途中で時事ネタをやったんです。でも、ネタ合わせのときに「誰か問題を起こした人をイジるのって、なんか今っぽい感じじゃないな」って大地(洋輔)さんと話して。もっとスタンダードなボケをやろう、っていうことになったんです。

で、全然大したボケじゃないんですけど、一番ウケたのがCHAGE and ASKAからCHAGEが脱退したって話をしたときのアドリブで。「あのヒットソングの“まあまあまあ”」「いや“YAH YAH YAH”だろ」ってやり取りをしたら、ドカンってウケたんですよ。

終わった後に考えたら、たしかに「まあまあまあ」って、今のチャゲアスに一番贈りたい言葉だよなって。問題を起こしたり話題になってる人を攻撃したりイジるんじゃなくて、「まあまあまあ」って声をかける、みたいなね。

:ははははは。まさに“You Need to Calm Down”ですね。

大谷:まあ、ちょっと冷静になろうよ、ってね。この感じって今の時代にすごく大事な気がするな。

左から:柴那典、大谷ノブ彦

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プロフィール

大谷ノブ彦(おおたに のぶひこ)

1972年生まれ。1994年に大地洋輔とお笑いコンビ、ダイノジを結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。音楽や映画などのカルチャーに造詣が深い。相方の大地と共にロックDJ・DJダイノジとしても活動。著書に『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』、平野啓一郎氏との共著に『生きる理由を探してる人へ』がある。

柴那典(しば とものり)

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は『AERA』『ナタリー』『CINRA』『MUSICA』『リアルサウンド』『ミュージック・マガジン』『婦人公論』など。日経MJにてコラム「柴那典の新音学」連載中。CINRAにて大谷ノブ彦(ダイノジ)との対談「心のベストテン」連載中。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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