今、ロックが立ち向かう敵は気候変動? 大谷ノブ彦×柴那典が語る

今、ロックが立ち向かう敵は気候変動? 大谷ノブ彦×柴那典が語る

テキスト
柴那典
撮影:Uwabo Koudai 編集:中島洋一、中田光貴(CINRA.NET編集部)

(『天気の子』は)この時代に天気をテーマにしたのがすごい。(大谷)

大谷:そうそう、映画と言えば、『天気の子』はどうでした?

:最高でした。賛否両論あるみたいだけど、僕は絶賛。

大谷:僕はね、11歳の息子と観たんですよ。息子は観終わってすぐに「お父さん、僕は『君の名は。』よりもこっちの方がいいと思う」って言ってました。小説版の『天気の子』も読んだんですけど、それが息子の初めて読んだ小説だったんですよ。「お父さん、すごいよ! 主人公の心情が書いてあるよ!」って(笑)。

:ははははは。それはいい読書体験ですね。あれは明確に10代に向けた作品ですし、11歳がグッときてるなら間違いない。

大谷:で、息子はいろんな人がブログに書いてある感想や批評を読んでるんです。すこしネタバレになりますけど、『天気の子』って、自分の守らなきゃいけないものと世界のどっちを救うかという、選択の物語だと思うんです。だから観終わった後にいろいろ解釈が揺れるところもあるし、賛否両論あると思うんですけれど。

:ですよね。あの映画で大事なポイントはRADWIMPSの曲だと思うんですよ。主題歌が上手く使われているっていう以上に、野田洋次郎の書いた歌詞が作品全体に強く影響を与えてる。

新海誠監督が言ってたんですけど、音楽をRADWIMPSに頼むのを決める前に、とりあえず読んでみてほしいって野田洋次郎に脚本を送ったんですって。そうしたら“愛にできることはまだあるかい”の歌詞が送られてきた。そこからどんどん進んでいったって。

大谷:あの曲、最高ですよね。ずっと口ずさんじゃったな。

:あと、最後には“大丈夫”っていう曲で終わる。あの2曲って、『君の名は。』の“前前前世”と比較するとわかりやすいんですけど、歌の中で答えが出てないんですよね。

“愛にできることはまだあるかい”は<僕にできることはまだあるかい>って歌ってるし、“大丈夫”も<君の大丈夫になりたい>って歌ってる。助けになりたいし、できることはたしかにあるはずなんだけど、それがなにかはわからないって歌なんです。だから観終わった後に問いかけが残る。

大谷:たしかに。息子のクラスでも話題になってたんですけど、みんな感想を検索してるって言ってました。そういう意味でも今の映画だよなって思いますね。あと、この時代に天気をテーマにしたのがすごいなって。

:本当にそうですよね。明らかに今のグローバルな領域での一番の関心事項は気候変動になっているわけですから。

柴那典(しば とものり)<br>1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は『AERA』『ナタリー』『CINRA.NET』『MUSICA』『リアルサウンド』『ミュージック・マガジン』『婦人公論』など。日経MJにてコラム「柴那典の新音学」連載中。CINRA.NETにて大谷ノブ彦(ダイノジ)との対談「心のベストテン」連載中。
柴那典(しば とものり)
1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は『AERA』『ナタリー』『CINRA.NET』『MUSICA』『リアルサウンド』『ミュージック・マガジン』『婦人公論』など。日経MJにてコラム「柴那典の新音学」連載中。CINRA.NETにて大谷ノブ彦(ダイノジ)との対談「心のベストテン」連載中。

これ、ちょっと気になってるんですけど、今年ってサマーソングのヒット曲ってあったっけ? って思うんです。(柴)

大谷:今年は異常気象や災害も多かったし、日本でもだんだん気にする人が増えてきましよね。

:これ、ちょっと気になってるんですけど、今年ってサマーソングのヒット曲ってあったっけ? って思うんです。カルヴィン・ハリスの“Summer”みたいな、夏のビーチで楽しく盛り上がるタイプの曲。

カルヴィン・ハリス“Summer”を聴く

大谷:あ、たしかにないかも。

:もちろんリリース自体はあったと思うんですけれど、今年の夏はずっと全米1位と2位がLil Nas Xの“Old Town Road”とビリー・アイリッシュの“bad guy”でしたからね。ひょっとしたら、だんだん夏が外にいて楽しい季節よりも辛い季節になってるのを反映してるんじゃないかって思うんです。

Lil Nas X feat. ビリー・レイ・サイラス“Old Town Road”を聴く

ビリー・アイリッシュ“bad guy”を聴く

大谷:ああ、なるほど。暑すぎてみんな外に出たくなくなってるっていう。

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プロフィール

大谷ノブ彦(おおたに のぶひこ)

1972年生まれ。1994年に大地洋輔とお笑いコンビ、ダイノジを結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。音楽や映画などのカルチャーに造詣が深い。相方の大地と共にロックDJ・DJダイノジとしても活動。著書に『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』、平野啓一郎氏との共著に『生きる理由を探してる人へ』がある。

柴那典(しば とものり)

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は『AERA』『ナタリー』『CINRA』『MUSICA』『リアルサウンド』『ミュージック・マガジン』『婦人公論』など。日経MJにてコラム「柴那典の新音学」連載中。CINRAにて大谷ノブ彦(ダイノジ)との対談「心のベストテン」連載中。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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