西寺郷太が感じたPodcastの可能性 新しい発見との出会いを求めて

西寺郷太が感じたPodcastの可能性 新しい発見との出会いを求めて

インタビュー・テキスト
村上広大
撮影:鈴木渉 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

感動の追体験だけではない。新しい感動を味わうための番組を目指して

―今回の番組では「インプット・アウトプット」がコンセプトになっていますよね。これはどういった意図があるのでしょうか?

西寺:自分もアウトプットばかりしていると枯れてしまうので。新たに知らないことを学ぶことは栄養になります。世代的には「教えてゆく」ことも大切になっていると実感しているのですが。特に2000年代は、よくも悪くも90年代のスノッブな「渋谷系文化」への反動もあったんでしょうか、真逆の「反知性主義」に振れすぎた気がするんです。なんでもかんでもわかりやすくしよう、と。

―そういう流れに抗うようなことも『GOTOWN Podcast』を通じてやっていきたいと考えていますか?

西寺:いや、それはもう僕がずっとずっと抗ってきたことなんですよ(笑)。バンドでもそうですし、テレビやラジオなどいろんな場面で実践してきました。本も10冊近く書いて、連載も月13本、もっとかな? わからないほどですし(笑)。だから、あらためてということはないですね。

ただ、僕自身が今のように本格的に情報や歴史を伝える側になったのって30代になってからなんですけど、そうするとアウトプットが中心になっていくんですね。プリンスの話をするにしても、マイケル・ジャクソンの話をするにしても、基本的には自分が理解していることを「先生」のような立場で話すわけですから。

その一方で先述の『ぷらすと』は違いました。最近終了してしまいとても残念なんですが、そこではタナソウ(田中宗一郎)さんや宇野維正さんのような音楽評論家、ジャーナリストはもちろん、WOWOW自体が映画に強いこともあってたくさんの映画評論家の方々、他ジャンルのエキスパートからさまざまな話が聞けて。自分が詳しくない話もMCとして当然受け止めなければいけない。僕にとっては大切なインプットの場でもあったんです。ただインプットばかりに偏っても、という問題もあって。

―『GOTOWN Podcast』では、そのバランスが取れたことをやりたかったということでしょうか。

西寺:そうですね。

たとえば、ロックフェスで僕も含む40代がOasisの楽曲をリアムやノエルが奏でるのを聴いて大合唱して感動する。それはもちろん楽しいですが、自分の中にすでにある感動を再確認する行為ですよね。それだけじゃなく、新たな音楽を吸収することで生まれるなにかも忘れたくない、といいますか。

第1回で取り上げた『ヒプノシスマイク』は、僕にとってはまさにインプットとアウトプットが同時にできたものだったんです。というのも、僕は『ヒプマイ』に楽曲を提供しているのですが、制作するタイミングでどんな楽曲がいいかスタッフに尋ねたら「郷太さんが今までNONA REEVESやプロデュース作で出してきた純粋なテイストでぶつかって来てもらえれば自然に混ざる、その化学反応が楽しみだ」というオーダーをいただいたんです。つまり、僕は『ヒプマイ』を知らなかったからこそ、新たな観点を加えるために呼ばれたと思うんですよ。

その一方で、僕も『ヒプマイ』への興味が増しているので『GOTOWN Podcast』の第1回では、同じく楽曲提供をしているHOME MADE 家族のKUROくんや、『週刊SPA!』で副編集長をしている田辺健二さんを招いて、『ヒプマイ』の魅力について掘り下げることことから始めました。

もしかしたら番組を聴いてくださった若いリスナーの中には「こいつ、曲作ってる割りに『ヒプマイ』のこと全然知らないじゃん」と感じた人がいると思います(笑)。そういう僕が「学ぶ」特集も、1回かぎりで終わらせるのではなく、連続していくことで生まれる価値があるんじゃないかなと思います。だから、楽曲提供者繋がりで□□□の三浦康嗣くんや、Creepy Nutsなど制作者陣に定期的に声をかけて、再び『ヒプマイ』について掘り下げて話すことは続けたいですね。

『西寺郷太のGOTOWN Podcast』第1回を聴く(Spotifyを開く

『GOTOWN Podcast Playlist: ヒプノシスマイク』を聴く(Spotifyを開く

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リリース情報

『西寺郷太のGOTOWN Podcast』

NONA REEVESの西寺郷太がパーソナリティを務めるSpotifyオリジナル・ポッドキャスト。西寺自身が「インプット・アウトプット」をテーマに掲げ、音楽はもちろん、政治、歴史、映画、書籍など自由自在なトークを展開。テーマにちなんだゲストを招き、深く知る話を展開(アウトプット)しつつも、ゲストを迎えて新たな視点を吸収(インプット)。リスナーの興味・知識をくすぐる番組を目指している。

プロフィール

西寺郷太(にしでら ごうた)

1973年東京生まれ京都育ち。早稲田大学在学時に結成したバンド「NONA REEVES」のシンガー、メイン・ソングライターとして、1997年デビュー。以後、音楽プロデューサー、作詞・作曲家としても少年隊、SMAP、V6、YUKI、鈴木雅之、岡村靖幸、私立恵比寿中学などの多くの作品、アーティストに携わる。日本屈指の音楽研究家としても知られ、近年では特に80年代音楽の伝承者としてテレビ・ラジオ出演、雑誌連載など精力的に活動。マイケル・ジャクソン、プリンスなどの公式ライナーノーツを手がける他、執筆した書籍の数々はベストセラーに。代表作に小説『噂のメロディー・メイカー』(扶桑社)、『プリンス論』(新潮新書)など。現在「文藝春秋digital」にて半自伝的小説『'90s ナインティーズ』他、多数メディアで連載中。

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