アイドル内山結愛が、100本以上のアルバムレビューを続けた理由

アイドル内山結愛が、100本以上のアルバムレビューを続けた理由

2021/11/30
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:廣田達也 編集:黒田隆憲、CINRA編集部

理解できない音楽に出会ったときも、「そこが面白い!」と思う

―noteでは、アルバムの全収録曲をレビューしているんですよね。言葉にするのが難しい曲もなかにはあるのでは?

内山:ファンの方にもよく「あの曲、捉えどころがなさ過ぎない? よく(レビューを)書けるね」とか言われるんですけど、そこはもう根性で(笑)。ただ、映画音楽を取り上げたときは大変でした。映画を観てその内容にも触れつつ、音楽の印象を言葉にしていく塩梅をどうするかすごく悩みましたね。

内山結愛

内山:逆に、向井秀徳(ナンバーガール、ZAZEN BOYS)さんの作品を集中的に取り上げたときは、自伝『三栖一明』を読んだり全作品を聴き込んだりして挑んだのですが、もう書きたいことが多すぎてまとめるのにものすごく苦労しました(笑)。

―本当に勉強熱心なんですね。2021年9月28日にDOMMUNEのイベントで共演させていただいたとき(『ele-king Presents 実写版「マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの世界」The World of My Bloody Valentine』)も、事前にものすごくリサーチしたとうかがいました。

内山:たくさんしました!(笑) ディレクターと一緒に読書会や作戦会議を何度も開いたり、関連書籍に付箋を貼りまくってページごとにレジュメをつくったり。「このアルバムは何年にリリースされて……」みたいな、トークのシミュレーションもしましたね。ここまで一つのバンドについて調べたことがなかったので、ものすごくいい経験になりました。しかもインプットだけじゃなくて、「イベントに出演する」というアウトプットもあったので、勉強のかたちとしても理想的でしたね。

―2021年9月、noteのレビューはついに100枚を突破しました。それによって、内山さん自身に何か変化はありましたか?

内山:まず、家のCDラックがパンパンになりました(笑)。いろんな音楽を知ったことで、さらに音楽が好きになったし知りたくなったし、どこまで行ってもゴールにたどり着くことがないから、ずっと好奇心を刺激され続けている感じです。

内山結愛

内山:そういう意味では初回からずっと変わらず楽しいんですけど、自分には「好き嫌い」がまったくないことにも気づきましたね。理解できない音楽に出会ったときも、「そこが面白い!」と思うし。

他の方のレビューを読むと、「俺は(このアルバムは)好きじゃない」みたいに書いている方もいて。感想は人それぞれだから、それはそれでいいんですけど、私自身は例えば捉えどころがなかったり、ピンとこなかったりする楽曲であっても、どうにかこうにかいいところを見つけて言葉にしたいんですよね。きっと、負けず嫌いな性格なのもあるとは思うんですけど。

―なるほど(笑)。

内山:好き嫌いがはっきり別れそうなノイズミュージックとかは、確かに耳がキンキンするし怖いし、1人で聴いていたら何かが襲いかかってきそうな恐怖感もあるけど(笑)、でもそのなかにも、例えば裸のラリーズだったら「甘さ」があるとか、そういう発見もある。それを噛み砕いてうまく言葉にできたときは、「攻略した!」「勝った!」みたいな、謎の達成感があるんです。

水谷孝を中心に、1967年に結成された裸のラリーズ。内山が5月に「TOKION」でスタートした連載の1回目で取り上げられ、「強烈なノイズの後ろで呑気に漂う甘美なメロディー、という構図が不気味で、危ないと思つつも、もっと深いところまで迫りたくなるこの感じ」と評された(Spotifyを開く

内山:いま、自分は好き嫌いがないと言いましたけど、そんななかでも「特に好きなジャンル」みたいなものは、自分でもだんだんわかってきて(笑)。例えば「エモ」と呼ばれるジャンルのアルバムを聴くと、自分のなかの昂りと興奮が抑えられなくなりますね。特にThe Get Up Kidsは何回聴いても泣きそうになる。おそらく父がスマパン(The Smashing Pumpkins)とかNirvanaとかを車のなかで聴いていて、そういうサウンドに慣れていたというか、身近な音楽として存在していたことを思い出すのかもしれないです。そこに気づけたのは大きな収穫です。

「The Get Up kids の『Something to Write Home About』を聴いてみた編」を読む

―ずっと文章を書き続けたことで、文章力やボキャブラリーも向上したと思います?

内山:ここ最近のレビューは、最初の頃と比べて文字数が圧倒的に多くなりましたね。今年11月にMy Bloody Valentineの『Loveless』がリリースから30周年を迎えたので、2019年8月に書いた自分のレビューを久しぶりに読み返してみたんですけど、1曲に対して2、3行しか書いてなくてびっくりしました(笑)。いまならもっと興奮して熱い文章を書き連ねそうです。

「My Bloody Valentineの『loveless』を聴いてみた編」を読む

―ちなみに、内山さん自身が「これは最高傑作」と思うレビューは?

内山:えー、なんだろう……すごく評判が良かったのは、SlayerとかSunn O)))について書いたレビューですね。スラッシュメタルとか初めて聴いて、めちゃめちゃ速くてびっくりしたんですけど(笑)、そのときの自分の興奮をそのまま文章にしようと思って書いたら、それをファンの人たちも同じように興奮しながら読んでくれてすごく嬉しかったです。


noteの更新を告知する内山のツイート。毎回、アルバムの「持ち方」にも工夫がみられる

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作品情報

『Yellow』RAY
RAY
『Yellow』(CD)

2021年6月23日(水)発売
価格:1,650円(税込)
LSME2

プロフィール

内山結愛(うちやま ゆうあ)

大学生兼アイドルグループRAYのメンバー。RAYではシューゲイザーをはじめ、IDMから激情ハードコアまで、「マイナー音楽×アイドルソング」に挑戦している。ディスクレビューnoteを週に1度のペースで公開し、Twitterでは“#内山結愛一日一アルバム”で毎日なんらかのアルバムを紹介中。DJとして活動することも。古今東西の名盤を聞きあさりながら日々音楽を楽しむ。

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