Age Factoryが叫ぶ「殺してみろよ」。優しく生きるための怒号

Age Factoryが叫ぶ「殺してみろよ」。優しく生きるための怒号

Age Factory『EVERYNIGHT』
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:Kazma Kobayashi、Naoki Yamashita、西槇太一
2020/05/07
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いろんなメディアを自由に使って、どこにでも行ける。だけど、広いところへ行っても自分のアイデンティティを誇れてなかったら自分である意味がないんですよ。

―“HIGH WAY BEACH”で歌われているのは、仲間とともに儚い一瞬を笑い合う情景ですね。

清水:“HIGH WAY BEACH”はRY0N4(ARSKN / 清水エイスケとともに『HEAVEN』というプロジェクトでも活動)と一緒に歌詞を書いたんですけど、自分の周りのヤツらと深いところで共有できる心象風景を「存在」として生み出せたのがデカかったんですよ。朝までスタジオに入って、みんなで車に乗って、ハイウェイを走りながらどうでもいい話をして、笑って……そういう瞬間はフッと過ぎるけど、振り返って「ああいう瞬間の中にいたいな」って思えるのは、そういう一瞬だと思うんです。

―現実に見える・見えないじゃなくて、自分が自分の信じるものと時間をともにできる時間や安心の象徴として、自分の原風景や、愛する仲間との時間が歌になってきたということ?

清水:そう、結局それがいろんな人に通ずるロマンやと思うし、さっき話した「誰にも通ずる原風景」やと思うんですよ。それに、そういう儚くて美しい瞬間を表現できるのが日本語のロックの力やし、俺が好きだったロックバンドの姿なんです。

―以前インタビューした際にルーツとして話してくれたbloodthirsty butchersやeastern youth、LOSTAGEの音楽もまさにそういうものですよね。大事にしてきた心象風景のひとつとして、自分のルーツも思い返したというか。

清水:そうそう。だからね、さっき言ってくれたように俺らは昔から何も変わってないんです。決して難しいことを求めてきたわけじゃなくて、変わらず歌ってきたのは、自分が青くいられる時間へのロマンなんですよね。

西口直人
西口直人

増子央人
増子央人

―逆に言えば、青くいられる場所が少ない世の中になっているというか。

清水:それはあるんでしょうね。

―前作の“TONBO”という曲でも、<夕方5時のサイレン もう帰ろうよ / あの日と同じように>と歌われていたじゃないですか。「家に帰る」っていう意味以上に、自分の原風景とは違う外的なものに流されやすくなった人へのアラームとして、手の届く範囲を愛することから自分の心のありかに還ろうっていう意味にも聴こえてきたんですよ。今作は、その本質がクリアに見えやすいアルバムだと思うんですね。

清水:ああ……世の中的に言えば、俺が本当に好きだったロック像が描きにくくなってきてるとは思うんですよ。ストリーミングサービスで海外のアーティストを山ほど聴けるし、SNSでも、自分以外の人の声があまりに多すぎて「自分しか見ていないもの」の価値が流されやすいじゃないですか。「帰ろう」っていうのは、そういう根本に立ち返ることでもあったんでしょうね。そういう時代性に対して、何より自分自身がどうあるのかっていう感覚を、今回のアルバムで研ぎ澄ませたところはあったのかもしれない。

Age Factory“TONBO”を聴く(Spotifyを開く

清水:ただ一方で、俺はこの熱量が一生続くとも思ってなくて。そう思うからこそ「こんな瞬間が永遠に続けばいいのに」って思えるし、純度高く音楽にできるんですよ。維持するでも誇示するでもなく、ただ燃え続けるだけ。その炎を綺麗な色にすることしか考えてないんです。でも、その色を研ぎ澄ますことこそが存在証明じゃないですか。だからもう、ストリーミングで海外の人にも聴かれたほうがいい、アルゴリズムがどうこう、みたいな発想もないんですよね。

―逆に言うと、オリジナリティのある音楽的なトライや自由さは、自分のアイデンティティと立脚点を自覚することから始まるわけで。

清水:そうなんですよね。もちろん、僕の世代は自由にいろんなメディアを使いこなして、どこにでも行けることを知ってる。だけど、広いところへ行っても自分のフィーリングを信じられなければ意味がなくて、それこそ自分のアイデンティティを誇れてなかったら自分である意味がないんですよ。で、俺から見ると、器用にいろんなメディアを使っていても、自分の原風景を信じられていない人が多いように見える。いい顔してうまいこと取り繕ってるだけの、カルチャー面したものが多すぎるんですよ。

―逆に伺うと、エイスケさんにとってのカルチャーって、どういうものを指しますか。

清水:うーん……「新しいもの」ですかね。新しいものと言っても、いろいろあるとは思うんですよ。0から生み出されるものもあるけど、でも2000年代以降は、従来の価値観に対して個人が持っているオリジナリティをミックスさせることで新しさを生むのが前提になってきたし、俺らもそういう世代に生まれて。そもそも今のバンドはみんなミクスチャーじゃないとおかしいくらいじゃないですか。

―まさにそうですね。時代性としてもそれは長年の大きなテーマだし、ミクスチャーであることが前提になってポップミュージックも転がってる。だからこそ混ぜ方や消化の仕方、精神性や必然性が問われるわけですけど。

清水:ただ混ぜるだけなら文脈のないバラバラなものになってしまって、その人自身である意味がなくなるからね。そこでどう文脈を通せるか、自分にしかない消化の仕方を見せられるか。その人だからこその文脈と、個人と個人で受け継がれるものの中で育まれる人の営みこそがカルチャーなんだと思います。

プレイリスト『Listening Together #聴いてつながろう』(Curated by Age Factory)を聴く(Spotifyを開く

Age Factory

―それで言うと、Age Factoryの音楽の中にはパンク、1990年代のエモやオルタナティブロックの匂いが強烈にある。それらの音楽の背景にあるユニティへの意識や、仲間と桃源郷を作ることへの強烈なロマンは歌にもたくさん入ってますよね。

清水:世の中とか世界とか言っても、結局は自分から始まるんです。Age Factoryを好きって言ってくれる人とひとつのユニティを作ることがカルチャーなんですよ。たとえば『HEAVEN』も、俺の思う「自分の場所」って感じ。いいなって思える仲間だけに囲まれたユートピアですよね。昔は「何かを成し遂げる」っていうのは売れたり評価されたりすることだと思ってたけど、それが第一義じゃないから。今までの枠や価値でバンドを測る必要もないし、世の中の価値観だってそうですよね。


昨年奈良NEVERLANDで行われた『HEAVEN pre. 『YEAR END PARTY』』でのライブ。「HEAVEN」は清水エイスケが中心となりRY0N4、Lil Soft Tennisらとともに活動しているプロジェクト。『EVERYNIGHT』のアートワークも「HEAVEN」によるもの。

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リリース情報

Age Factory『EVERYNIGHT』
Age Factory
『EVERYNIGHT』(CD)

2020年4月29日(水)発売
価格:2,500円(税込)
UKDZ-0208

1. Dance all night my friends
2. HIGH WAY BEACH
3. Merry go round
4. Peace
5. CLOSE EYE
6. Kill Me
7. Easy
8. Everynight
9. 1994
10. nothing anymore

プロフィール

Age Factory
Age Factory(えいじ ふぁくとりー)

奈良県にて2010年に結成。清水エイスケ(Vo,Gt)、西口直人(Ba,Cho)、増子央人(Dr,Cho)からなるロックバンド。『LOVE』(2016年)、『GOLD』(2018年)に続くフルアルバム『EVERYNIGHT』を4月29日にリリースした。

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